内部統制報告制度ラウンドテーブル
日本内部統制学会、日本公認会計士協会(JICPA)主催の「内部統制報告制度ラウンドテーブル」が開催された。上場企業(大手、ベンチャー)、監査人、投資家(アナリスト)、弁護士、監査役、内部監査人といった関係者に金融庁、東証、JICPA、学者、経産省といったメンバー。各種アンケート調査なども踏まえ、3月決算の結果と今後の展開について議論された。司会は「ミスター内部統制」八田教授。
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_1234.html
上場企業側からは、J-SoX導入でよかった点と共に、コストや手間がかかりすぎる制度や特に監査人に対する不満の声が上がっていた。一方、監査人側は、「上場会社も監査人もよくがんばってこんなによくできた」みたいな話でどうもかみ合わず歯切れが悪い。それとまるで雲の上での話のようで、出席者が偉すぎて、現場での具体的な話に結びつかないので、切迫感がない。
いくつか気になった点を。
1.会計士側にはあまり反省がない
JICPAから、監査人に対するアンケート結果が公表されたが、監査の効率性を上げる必要性については言及されているものの、上場会社側の不満については、あまり意識していないように感じられた。判断のばらつきとか、ドキュメンテーションだとか、現場の判断と品質管理部門の見解の相違だとか、そういうことについては、問題があったとは思っていないようだ。
2.プリンシプルベースとルールベース
J-SoXの基本的なスタンスはプリンシプルベース(原則ベース)であって、上場会社と監査人がそれぞれの会社の事情に合わせて内部統制を構築するという建前にはなっているが、実際には、判断のばらつきを抑えるために監査法人の画一的なマニュアル等や金融庁の諸文書をその通りにやろうとしてによってルールベース的な運用になっている点が指摘されていた。IFRS導入においても同様の問題が生じる可能性がある点が懸念されている。この点をどうしていくかということについての突っ込んだ議論がなされなかったのは残念。監査法人のマニュアルもアメリカ式のルールベース的な考え方だから、それを取り入れている日本の大手監査法人が同じようになるのもやむなしか。一方、中堅監査法人は、中小規模の上場会社に対するルール見直しの必要性に言及していた。
3.内部監査の利用
監査効率のアップのために、内部監査結果をもっと活用すべきだという意見が監査人側から提言されていたが、そもそも、内部監査体制が十分に整備されていない、また内部監査の目的が財務報告の信頼性ということに重点が置かれていなかったこと、支店などの監査が中心で本社、特に経理部門の監査が行われていなかったこと、などから内部監査の充実の必要性が主張されていた。一方、実務側からの視点の議論として欠けていたと思われるのが、運用テストにおけるサンプリングチェックの問題である。内部監査による運用テストの結果に依拠するということは、監査人のマニュアルに定められた監査人のためのがんじがらめのサンプルチェックの方法を内部監査人に要求することになるということ。本当にそれでいいのか。監査人は楽になるかもしれないが、内部監査の負担はどうなるのか。
4.ドキュメンテーション
これも議論がかみ合わなかったテーマの一つ。いわゆる3点セットの話と、電子化された伝票を紙で打ち出して捺印するといった内部統制の証跡を残すことがぐちゃぐちゃに議論されていた。上場会社側が問題にしているのは、どちらかといえば、画面を見てチェックするだとか電子承認するだとかいったペーパーレスの方向性に逆行する紙での保存や紙上での捺印などを監査人が要求するのはやめてほしい、ということであって、3点セットの問題ではない。これも、運用テストの問題である。紙の書類なり伝票に捺印がなされていなければ、監査人が運用テストができないということなのだと思うが、これに対して、監査人側が何も答えなかったのは残念。
5.重要な欠陥
これについては、鋭い指摘も出たものの、「事なかれ」ではないが、何となくあいまいな形で議論が収束してしまった印象がある。「本当にこんなに少ないのか?」「決算での間違いなどといった内容の欠陥しかないのか?」「IT統制の欠陥はないのか?」などといった疑問が出されたにもかかわらず「上場会社と監査人ががんばった結果である」「経営者と監査人のコミュニケーションが米国よりはるかによく、事前に問題が解決された」だけで済まされてしまった。それ自体は否定するものではないが、内部統制報告書の詳細分析や、有効であるとされた企業におけるその後の不正等の状況を見る必要があろう。
なお、重要な欠陥について、東証では適時開示の対象とする方向性であるとの説明があった。上場会社自体が適時開示を通じて自ら重要な欠陥について説明することが、誤解に基づく風評リスクを防止する観点からも重要という考え方のようである。
その他、内閣府令の改正等もあるようである。
4時間にわたるラウンドテーブルであったが、ここから何か新しい動き、方向性が見えてくるのだろうか?米国では、ラウンドテーブルをきっかけにかなり変わったようであるが、今日の議論だけでは具体的な方策にはなかなか結びつきそうもないような気がする。
いずれ、会計・監査ジャーナルでも取り上げられるはずなので、ご興味のある方は目を通していただきたい。
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