2008年10月22日 (水)

金融庁、第一四半期報告書XBRL化の結果報告を公表

金融庁は、10月21日に「第1四半期に係る四半期報告書におけるXBRLデータの提出結果」を公表しました。

http://www.fsa.go.jp/search/20081021.html

これによれば、初めてXBRL化された四半期報告書の提出は大きな混乱もなく順調に行われたとのことですが、提出されたXBRLデータの一部において改善すべきと思われるものが発見されたそうです。

金融庁では、これら改善すべき事項の例を取りまとめ、既にEDINETへ提出済みのXBRLデータについても、これらに該当するものを発見した場合にはXBRLを修正のうえ再提出を検討するよう呼びかけています。

XBRL化に伴い四半期連結財務諸表規則等が改正になっているにもかかわらず、その趣旨が理解されずに誤って作成している例が見られるようです。

以下、金融庁が掲げている改善すべき事項についてコメントしてみます。具体例は金融庁HPをご覧ください。

1.勘定科目の選択にあたり、EDINETタクソノミの勘定科目を使用せずに、同等の勘定科目を独自の科目として追加している例

(1)EDINETタクソノミの勘定科目と同一表記かつ同一意味(財務諸表における区分及び各種定義等が同一)の勘定科目を追加している例

これは、タクソノミに当該科目があるのを見つけられなかった。並び順が自社と違った。業種が違うなど理由が色々あると思いますが、一般的には、EDINETタクソノミの科目を使う必要があります。印刷会社に自社のやり方が一般的に適切なのかを確認したうえで、訂正及び第2四半期に向け対応する必要があります。

(2)EDINETタクソノミの勘定科目と表記は異なるが、同一意味である勘定科目を追加している例

これについては、今回のEDINET XBRL化に伴う勘定科目変更の取り扱い及びその趣旨を十分に理解していなかったケースが多いのではないかとも思われますが、正当な理由による表示方法の変更ということで認められます。絶対にあってほしくないですが、監査人がこの取り扱いを理解せず誤った指導をしているケースがなかったか懸念があります。これについても、訂正及び第2四半期に向けての対応が必要かと思われます。なお、同一意味かどうか微妙なケースもありますが、そこは監査人と協議ということになるかと思います。同一といえるかどうか微妙な場合に無理してEDINETタクソノミの科目を使うことまでを強制しているわけではありません。

(3)EDINETタクソノミの勘定科目と同一表記かつ同一意味であるが、英語表記の異なる勘定科目を追加している例

これは、当初からある程度予想されたことではあります。つまり、例えば、日本語で「売掛金」といっても、英語では実に様々な科目表記が使われており、また、海外投資家からの訴訟リスクなど考えた場合に、いかに金商法上「参考情報」であってもおろそかにできない、という事情があります。グローバル化した大企業ほどその傾向が強いですから、なかなか解決しないのではないかと思います。参考情報である英語科目表示のために、本来の趣旨がゆがめられるというのは本末転倒ではないかと思います。金融庁としてもやり方の見直しを検討すべきではないかと個人的には思っているのですが。

(4)区分損益を示す勘定科目を追加している例

これについては、明らかに理解不足ということかと思います。時間があれば恐らく印刷会社のほうで修正したのではないかと思われますが、これも訂正・見直しが必要かと思います。

2.企業別タクソノミの設定にあたり、計算リンクの設定を誤っている又は設定が漏れている例

これについては、印刷会社のほうできちっとチェックしてもらうしかないでしょう。

3.報告書インスタンスでの金額設定にあたり、入力値の桁数を誤って設定している例

これは、原因はわかりませんが、表示単位が異なる財務諸表同士を比較する際には円単位をベースに比較するので、おかしな結果が出てしまいます。「金額入力は円単位」「画面表示のための金額単位は別途設定」という考え方を覚えておきましょう。これも、明らかな間違いなので訂正が必要です。

4.提出されたXBRLデータより、一部の財務諸表が欠落している例

これは、提出時の不注意ということになるとは思いますが、XBRLデータを提出しなければHTMLデータも作成されないため、EDINET上一部欠落した財務諸表が画面表示されることになり、仮登録した段階でチェックすればすぐにわかるはずです。また、監査人も正式なものではないものの、自分たちが監査した対象の財務諸表とEDINETに掲載された財務諸表が同一かどうかを確かめることになると思いますので、その段階でも気がつきそうなものですが、どうなのでしょう?

5.その他の留意点

・債権又は固定資産等に係る純額表示又は総額表示の際に使用する勘定科目

これは今回の財規等の改正でXBRL家に伴い変更になった点ですが、純額表示の場合には「(純額)」とついた科目を使用することになります。今までなじみがない科目で、戸惑ったのかもしれませんし、減価償却の表示の仕方がよく理解できていなかったということかもしれません。監査人がHTMLをチェックする時にも気づくはずなのですが。これも、早めに対応しておけば印刷会社のほうである程度指導してくれたはずですので、第2四半期に向け、速めに印刷会社と調整しておくとよいと思います。 厳密にいえば、「(純額)」がついていなければ四半期財規違反ということになり、XBRLデータだけではなくHTMLデータも訂正(つまり訂正四半期報告書)ということなのですが、そこまで求めているのかどうかは定かではありません。

・各企業で追加した勘定科目の英語名称

これも、中小規模の上場会社では英語開示のノウハウがなく、こういうことが起こりうるということはある程度予想はされていましたが、果たして改善されるのでしょうか。

他の項目については、本来印刷会社のほうでチェックしていれば防げたミスではありますが、初めての四半期決算と重なったということもあり、恐らく時間がなかったのでしょう。タクソノミそのものは決算が締らなくても先に作っておくことは可能ですし、第2四半期では第一四半期で作成したものを使うことになるので、今のうちに見直すべきものは見直し、先にタクソノミの修正をしておいた方がよいのではないかと思います。年度決算についても早めにタクソノミを作成し、印刷会社や監査人(表示方法の変更の場合)にチェックしてもらうべきでしょう。

なお、日本公認会計士からは、監査人に対して同様の通達が出されています。

「第2四半期以降のXBRL形式による四半期連結財務諸表等の作成に向けた監査人の留意点について― 第1四半期の四半期連結財務諸表等の分析を踏まえて ―」

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_1060.html

こちらにも目を通していただくことをオススメします。監査人とも、事前に該当する事項がないかを確かめておかれてはいかがでしょう。万が一にも「知らなかった」などということはないと思います。

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2008年10月18日 (土)

「重要な欠陥」の影響を憂う

現時点で議論することは時期尚早かもしれませんが、個人的には、内部統制報告書において「重要な欠陥」があり、かつ改善されていない旨が記載された場合に、経営にどのような影響が出るかを、「危機管理」の一環として考えておく必要はないのかということが気になっています。

著名な会計士や学者の先生は、制度の趣旨は、内部統制を改善していくことにあるのだから、初年度はどんどん重要な欠陥を出した方がよいというようなことをおっしゃいますし、取引所も重要な欠陥があることをもって上場廃止の対象にはしないということは明らかにしてはいますが、だからといって、重要な欠陥が次から次へと開示された場合に、上場廃止にならないからいい、で済まされるのでしょうか?昨今の株価の状況や、実体経済の悪化に伴う企業の業績悪化という不安定要因がある中で、仮にそれが経営に直結しない内容であっても、株価にネガティブな影響を与える可能性が皆無といえるでしょうか? 最悪のシナリオでは、株価下落→信用不安→資金繰り悪化→倒産といったスパイラルに陥る可能性はないのでしょうか? もちろん、ゴーイングコンサーン注記に比較すればインパクトは小さいかもしれませんが、ネガティブな情報であることは間違いありません。

時価会計の見直しという超法規的な措置まで取りざたされている中で、果たしてこの経済状況で何が何でもJ-SoXを当期から適用するだけの重要性はあるのでしょうか?業績が急激に悪化する中でコスト負担に耐えられない上場会社が出てきたらどうなるのでしょう?監査人も、経済状況が悪化すれば粉飾のリスクが高まりますから、もっとリスクの高いところにリソースをつぎ込まないと、とんでもない失敗をやらかしてしまわないでしょうか?

と、考えると、状況次第では、適用の1年延期などということも経団連あたりから申し入れをするなどという可能性はないのでしょうか?

これは全くの個人的感覚なので、実際にそうなるかどうかはまったくわかりませんが、何となくそのくらいのことはやってもよいのでは・・・という気持ちはあります。

そもそも、八田教授のように「重要な欠陥」という訳語が適切ではないのではないか、ということをおっしゃる方もいらっしゃいます。あたかも致命的な欠陥があるようなとらえ方をされてしまいますが、致命的ということではないということのようです。つまり、言葉の持つイメージと実際に生じている問題の重要性にはギャップがあるようです。しかしこのギャップは、投資家をミスリードする可能性はあるということ。であれば、なおさら、用語の見直しを行うべきです。用語が不適切であったがために投資家をミスリードし、必要以上に株価に影響が及び、市場の混乱に結びつくようなことを避けるべきではないかと思います。

実務的にも、「重要な欠陥」になるかどうかのレベル感がさっぱり見えてこない。監査人一人ひとりによってレベル感がバラバラ、などという状況では、投資家のミスリードのリスクは高くなる一方。当然、経営リスクも高まってしまうわけで、企業を取り巻く環境事態が危機的な状態の中で果たしてそれだけのリスクを企業に負わせることができるのか。

どういうわけか、新聞などを読んでもそういう論調のことはほとんど出てきていません。「いまさら」ということはもちろんありますが、もし、内部統制に重要な不備のある上場企業を証券市場から退場させようということではなく、内部統制を是正していくことが制度の趣旨であるならば、何もことを急ぐ必要はない。上場会社が安心して重要な欠陥を開示して、かつ適切に対応できる環境を整備した上で導入しても遅くないのではないか。

考えすぎ、心配しすぎかもしれませんが、最近の株価の状況を見ていると、やはり、心配になります。果たして誰か声を上げるのでしょうか?

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2008年9月25日 (木)

J-SOXは茶番か

あちらこちらでJ-SOXの対応状況等に関するアンケート調査の結果が公表され、意外と対応が遅れている上場会社が多いなという感覚をお持ちの方も少なくないのではないかと思います。

それはともかく、具体的に作業を進めていくと、どうしても「茶番」になりがちな場面に遭遇することになります。実態が全く伴っていないのに、形式ばかり整えさせられる。内部統制の不備を是正することより、3点セットの書き方を直す方が優先させられる。そんな、どう考えても本末転倒なことに納得できない、という方もいらっしゃるでしょう。

例えば、数人しか社員がおらず、経理も会計事務所任せ、チェックは監査人任せの子会社の中で、決算財務報告プロセスに係る内部統制を整備しろといわれても、経理知識が全くない人が財務諸表を形式的にチェックするという程度が精一杯で、事実上、監査人の監査に頼らざるを得ないにもかかわらず、それでは内部統制の不備といわれる。では、経理の専門家を高い給料で雇わなくてはならないのか。せいぜい、親会社が子会社の業務委託先や監査人に親会社の方針を伝えて、それに基づいて経理処理なり監査をしてもらうということくらいしか出来ません。

こういう実態は、どこにでもあるにもかかわらず、金融庁は、この問題には触れようとしない。せいぜい業務分掌の問題までです。つまり、解決不能な「内部統制の不備」が厳然と存在するということに目をつぶって建前で処理するしかないということです。

さらに、決算財務報告プロセスの内部統制の評価というのも、極めて形式的になりがちです。経理実務がよくわからない内部監査部門の「シロウト」さんが、実質的に内部統制が有効に機能しているかをチェックしようと思っても、なかなか難しいでしょう。経理部門がチェックリストを作ったりしてお膳立てをして、それを内部監査部門が形式的にこなす。承認印の有無はチェックできても、その中身が本当にきちっとしているのかどうか、つまり実質的に統制が効いているのかどうかを確かめることがなかなかできません。繰延税金資産の回収可能性の判断をきちっと見ているか、などということは結果から判断するしかありませんが、単純な計算チェックや元データとの照合程度ならできても、判断に係ることが内部監査部門にそう簡単にできるとは思えません。これも実質的には監査人がチェックするしか方法がない。

決算財務報告プロセスだけでなく、IT統制についても、IT部門がお膳立てしたチェックリストなどで形式的にチェックすることはできても、内部監査部門が実質的に統制が効いているかどうかを検証することはなかなか難しい。あくまでも表面的なチェックにとどまらざるを得ない。こんなことで、内部統制のレベルを向上させることができるのか。形式的な「評価」自体が自己目的化してしまい、本来の目的である財務報告の信頼性向上に寄与しないのではないか。

J-SOXがすべて茶番とは言わない。実質的に役立つ部分もたくさんある。しかし、目的からして最も重要な決算財務報告プロセスの評価が「茶番」ということになると、果たしてここまで手間をかけてやるほどのことなのだろうか、という気もしないではありません。

J-SOXは、ダイレクトレポーティングを採用しないということをメリットの一つとしていますが、逆にそれが、「内部統制評価」に対する監査人の要求を厳しくし、茶番をよりいっそう本末転倒なものにしてしまってはいないか。

本末転倒なことについては、どしどし声を出していただきたい。大事なことは、適正な財務報告を作成し、投資家に提供することであって、3点セットを監査人の主義に合わせて理論的に完璧に美しく作ることではない。

金融庁もたびたびそういうことをいっているのにもかかわらず、個々の監査人に届かないのはなぜか。Q&Aなどを出しっぱなしにするのではなく、監査法人とよくディスカッションすべきだ。昔は、監査人は、不適正意見を出すことが目的で監査をしているのではなく、正しい財務諸表を作成させ、適正意見を出すために監査をしているのだといわれていました。しかし、正しい財務諸表を作成させるために指導性を発揮せず、批判性ばかり発揮していると、結局、不適正意見や意見不表明ばかりが連発されることになり、投資家のためにはならない。投資家は不適正意見がほしいのではなく、適正な財務諸表を必要としているのです。内部統制監査については、適正な財務諸表の作成が可能となる内部統制が構築されていることを求めるのであって、3点セットの作り方が悪いといって不適正意見を出すことを求めているわけではありません。

景気後退期にあって、上場会社も茶番に金をかけている余裕はなくなってくるはずです。コストをかけられないからこそ、本来の目的が達成されるように大事に金をかけるべきです。

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2008年9月13日 (土)

内部統制監査への期待と懸念

本番年度に入ってしばらく静かだったJ-SOX関係。ここのところアンケート結果が公表されたりして、再び話題が出てきました。文書化の遅れとか、全社的統制整備の遅れとか、相変わらずIT統制に係るツールの導入とか・・・。

しかし、私が業界人として一番心配なのは、内部統制監査が実質的にちゃんとできるのかどうか、監査人、特に若手会計士に内部統制の不備を見抜く力があるのか、及び内部統制の不備を会社自身に改善させる道しるべ的に役割を果たすことができるのか(監査人の指導性)ということです。

形式的な規程の有無や更新状態だとか、3点セットの書き方だとか、そういうところばかり指摘し、重要な財務報告の虚偽記載リスクに関係する内部統制の不備を見逃すことはないだろうか?3点セットだけ見ると良好そうに見えるが、いざ現場に行って実態を調べてみたら全く形式的で実効性がなかったにもかかわらず、それを見逃すことはないだろうか?

業界内でも古株会計士が気にしているのが、「最近の監査は、部屋の中でPCに向かうばかりで現場に行かない、現場の人に質問しない」ということです。実施基準やJICPAの監査実務指針でもウォークスルーとか視察とか質問とか再実施とかそういった監査手続が求められていますが(例示ではありますが)、そういうことをあまりやらずに3点セットの閲覧と監査の部屋の中で資料を持ってきてもらってできる運用評価手続だけで済ませてしまう。現場に行かずに質問しなくていいように、3点セットにより詳細な記述を求める。だから、形式的なことばかり言われて本当に問題になりそうな指摘はしてくれないし、内部統制を改善しようとしている上場会社にとってもあまり監査を受けているメリットが感じられない。なにせ時間がないというのが最大の原因で、監査人もとても気の毒なのではありますが。

それと、RCMやフローチャートを見て「不備」を見つけたとしても、それによって実際に誤謬や不正が生じているわけではないと上場会社が認識しており、特に手をつけたくないというところについて、監査的手法で本気で調べたら実はガタガタボロボロ、間違いだらけだったということになると、会社も手をつけざるを得なくなる。こういうことが監査現場でちゃんと出てきているか。遠山の金さんではないですが、動かぬ証拠を突きつけることで、会社も対応せざるを得なくなる。これがすばやくできることが監査人といおうか公認会計士の能力といっても過言ではないと思います。様々な監査上の経験から、不正や誤謬が生じやすいところをとっさに見抜き、そこを集中的に、しかも深く突っ込んで不正や誤謬を見つけ出す。そしてさらに大事なのは、原因を徹底的に調べて具体的な改善策が講じられるようなレベルに持っていくこと。原因調査が甘いとリスクに対処する適切な統制が構築できない。その手本を示せるのは、経験豊富な監査人。もちろん、不正や誤謬を発見すること自体が目的なのではなく、内部統制の不備によって実際に問題が生じているので改善する必要があるという監査人の主張に説得力を持たせることが目的ではありますが。ですからすべての不正や誤謬を洗い出す必要はない。

それと、統計的サンプリングの誤った適用によって、リスクの高いところの運用の不備がが見逃されてしまうのではないかという懸念もあります。昔の監査は、異常点だとかリスクの高いところを狙い撃ちしてサンプリングしていましたが、特にJ-SOXの運用テストでは実施基準の影響もあって機械的な統計的サンプリング中心になりがち。監査人もそれに近い。本来の統計学的考え方や監査マニュアルの考え方から言えば、すべてを一律に統計的サンプリングで行うのではなく、異常点だとか危なそうなところについてある程度集中的に見た上で、残りの部分について統計的サンプリングを実施するというような考え方だったのではないかと思います。たとえば、帳簿上のたな卸資産残高がマイナスになっているケースでは、その原因を確かめれば、多くの場合何らかの内部統制上の不備が見つかるはずです。整備状況レベルのものもあれば運用状況のものもあるでしょう。整備状況レベルで不備であれば運用評価にはいきませんので、統計的サンプリングの話は出てこないのですが、運用の不備が発見された場合に、不備があった統制についてそこから先統計的サンプリングを実施するのかどうか判断に困るところです。それがたまたまなのか、そもそもちゃんとやっていないからなのか、ということをどうやって判断するかです。そういうところにも監査人の知見というのは役立つはずです。社内の内部監査人(評価担当)が運用の不備を見つけて泥沼に陥ってしまうところを、監査人がうまく切りわけをして、迅速かつ的確に結論を出してみて、その手法なり判断の仕方を内部監査人が学び、次回から社内できちっと判断ができるようになる。

そんな指導的役割を監査人が果たすことができるのか。監査人なり個々の公認会計士の力量が問われるところです。

正直、監査現場はとっくの昔に限界を超えてしまい、内部統制なんかまともに見ている暇がないので期待されても困る、という声もあれば、仮に内部統制の不備を発見したとしても、それを指摘すれば上場会社から「具体的な改善策」を求められ、独立性の観点や監査契約範囲内での監査人の責任をできるだけ限定したい(余計なリスクを抱えたくない)という保守的な姿勢から内部統制の不備の指摘に消極的な監査人が増えてきているという声も聞きます。そうしているうちに、会計士の内部統制に関する能力(現場を見て実質を判断する力)もどんどん落ちてしまい、今度は内部統制監査における形式的なチェックや指摘に走ってしまうという状況になりかねないという懸念を持っています。そうならないよう、特に若手会計士には、少しでも機会があればPCからはなれて現場に赴いて、内部統制の実態をよく見て学んでいただきたいと思います。

また、内部統制コンサルといわれる人たちも、単なる3点セット作成代行で終わることなく、より現場の実態に密着し、理屈だけでなく不備により実際に問題が生じている証拠をつかみ、本当に問題があるところとないところ、リスクの高いところと低いところを見極めて改善のアドバイスをしていただければと思います。財務報告に係る内部統制の不備は、よくよく調べると経営的にも問題になるケースが少なくないです。J-SOXコンサルを契機として、より深い経営コンサルが行われ、企業の成長に結びついてくれれば、会社にとってもJ-SOXの支出はムダではなかった、ということになると思います。

監査を離れて数年になりますが、「えっ?こんな基本的なことも監査人は見てないの?」「こんなに問題があるのに監査人に指摘されていないの?」と驚いて心配になることがある反面、最近、監査って実はすごいんだ、本気でやればまじめな会社の役に立つんだ、ということを改めて感じて魅力的な仕事にも思えている次第です(じっくり監査をする時間さえあればですが・・・)。

果たして内部統制監査が監査現場の内部統制を見る力の向上に役立つのかどうか。。。

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2008年9月 3日 (水)

EDINET XBRLデータ修正に関するFAQ公表

第1四半期に係る四半期報告書の提出も8月14日に終り、XBRL化も順調に行われたようです。

その後、提出済のXBRLデータの修正を行う場合に関するFAQが8月29日に金融庁から公表されています。

「よくある質問(FAQ)」

http://www.fsa.go.jp/search/index.html

従来であれば、提出した開示書類の訂正は「訂正報告書」で行われてきましたが、今回からは、XBRL部分についてその訂正の内容によって取り扱いがいくつかに分かれることになりました。そのポイントを簡潔にまとめたものといってよいかと思います。

基本的には以下のようになります。

・XBRL 形式で作成した情報のうち公衆の縦覧に供されているものを訂正する場合は、HTML 形式で訂正届出書又は訂正報告書等を作成し、当該訂正後のXBRL 形式のデータを併せて提出する。
※EDINETシステムでのXBRLデータからHTMLへの変換は行ないません。
・XBRL 形式で作成した情報のうち公衆の縦覧に供されていないものを修正する場合は、「XBRLの修正」の手続きにより修正後のXBRL形式のデータのみを提出する。
・HTML 形式で作成したもののみを訂正する場合には、従来どおり、HTML 形式で訂正届出書又は訂正報告書等を作成し、提出する。

ところが、この「XBRL 形式で作成した情報のうち公衆の縦覧に供されているもの」というのが実にわかりにくい。XBRLデータは、EDINETで提出され、インターネットでだれでもダウンロードできるので、「公衆縦覧に供されているもの」「いないもの」といわれてもピンときません。そこで、簡単に説明してみたいと思います。

実は、金商法上は、XBRLデータというのは正式な開示書類ではありません。あくまで、HTML形式で作成され、IEといったブラウザを使って画面で見ることができるものが正式な書類です。つまり、財務諸表部分で言えば、EDINET上でXBRLデータから変換されたHTMLデータが正式な提出物で、XBRLデータはいわば中間生成物のような存在です。その中間生成物を行政サービスとして参考までに提供しているのであって、法律上公衆縦覧に供しているとはいえないのです。「公衆縦覧」と呼ぶには色々な要件があるのですが、要は、ブラウザのような汎用的なソフトウェアを使って画面表示して、それを人間が見て知覚できるものであることが必要なのです。将来的には、XBRLデータを直接EDINETの画面で見られるようにすることも技術的には可能かと思いますが、今はとりあえず、HTMLに変換して画面表示させるという方法を採用しています。

XBRLデータには、HTMLに変換した時に目で見える情報の他に、英語表示したり比較分析をしやすくするための様々な情報が組み込まれています。英語表示するための勘定科目には、金商法や開示府令、財規上の根拠もなく、任意の情報的な扱いになってしまい、監査の対象にもなっていません。こうしたものが「公衆縦覧に供されているもの」という取り扱いになります。

訂正報告書というのは、あくまで正式な書類であるHTMLデータを訂正する場合に提出されるものですが、XBRLデータが間違っていたがためにHTMLデータも間違ったというような場合、例えば金額とか、独自に追加した勘定科目に係る日本語表示の勘定科目名とかは、「XBRLデータの修正」という書類を提出すると同時に訂正後のXBRLデータを提出し、さらに及びHTMLで作成された訂正報告書を提出することになります。一方、HTML化した時に目で見える範囲では訂正の必要はないものの、比較分析等を行う際にエラーが出る可能性のあるようなものは、上記の手続のうちHTMLによる訂正報告書の提出以外の手続を行うことになります。

具体例はFAQをご覧ください。

結果的には、従来どおりのHTMLデータの他に、XBRLデータを参考資料として提出していると考えた方がわかりやすいかもしれません。

さて、XBRL化されたことによって、例えばどんな勘定科目が使われているかといった分析も容易になります。今後、提出されたXBRLデータがどのように使われ、その結果どのような統計が出てくるかに注目したいと思います。

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2008年8月 6日 (水)

JICPA、内部統制監査実務指針英訳公表

日本公認会計士協会(JICPA)は、監査・保証実務委員会報告第82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」(いわゆる内部統制監査実務指針)の英訳版を公表しました。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/82_1.html

諸外国における日本の制度への理解を高めるという目的もあると思いますが、日本の監査人が、海外子会社の監査を担当する海外の監査人(他の監査人)に日本の内部統制監査の中身を知ってもらう場合にも大いに役立つのではないかと思います。正直、ビッグ4などにおいても、日本におけるメンバーファームが日本の制度を説明しようと思ってもなかなか難しい面もあり、日本の制度に適合した監査マニュアル上の取り扱いなどを決める際にこの英訳及び実施基準の英訳を示すことで、ずいぶん理解が深まるのではないかと思います。海外の監査人が海外子会社に係る「他の監査人」として内部統制監査を行う際には、原則として、日本の内部統制監査基準、そしてこのJICPAの実務指針に従うことになりますので、日本のルールの理解をしてもらうことはとても大事なことです。

それとともに、上場会社が海外子会社において内部統制構築、評価を行う際にも、海外子会社への理解を深めるものとして役立つのではないかと思います。また、例えば、親会社の3点セットなどを海外展開する際には英語化が欠かせませんが、その際の訳語もこの実務指針に使われている訳語を参考にできるのではないかと思います。専門用語が多くて、普通の社員や翻訳専門家には翻訳がなかなか難しい面もあったかと思いますが、この英訳は一応専門家の目を通してはいるはずなので、さほどおかしな訳語にはなっていないはずです。

ということで、地味な公表ではありますが、上場会社におかれてもうまく活用していただければと思います。

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2008年8月 4日 (月)

四半期財規改正、8月7日公布予定

金融庁は、先にパブリックコメントを募集した財務諸表等規則、四半期財務諸表規則などを8月7日に公布する予定と発表しました。

「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」の公布予定等の公表について

http://www.fsa.go.jp/news/20/syouken/20080731-1.html

この改正のうち、たな卸資産表示関係の項目は、2008年6月末に終了する第一四半期の四半期報告書から適用可能です。四半期報告書の提出期限は、8月14日ですので、8月7日以降に四半期報告書を提出する企業であれば、新規則に基づく四半期(連結)財務諸表を提出することが可能です。

8月7日では、すでに監査(レビュー)が終了している可能性はありますが、レビュー報告書日付が8月7日以降であれば、新規則に基づくことも可能では。

来年度以降、表示方法の変更をすることによって、XBRL化された財務諸表の分析が若干しにくくなることを考えれば、このタイミングで新規則に合わせておくということも、投資家にとっては有用ではないかと思われます。

これについては、

http://bcj.way-nifty.com/xbrl/2008/07/xbrl_a33f.html

もご参照いただければと思います。

初めての四半期報告書作成、かつ、XBRL化ということで、慣れない中で新しいことを先取りしようというのもなかなか難しいかもしれませんが、監査人と協議しながら対応を検討されるとよろしいかと思います。

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2008年7月16日 (水)

EDINET XBRL化に伴う監査への対応

いよいよ初めての金商法ベースの四半期決算が佳境を迎えています。まもなく監査人のレビューもはじまることと思います。

今日は、EDINET XBRL化に伴い、経理担当者が監査またはレビューにどのように対応すればよいか、JICPAの公式文書をもとに考えてみたいと思います。

JICPAの公式文書そのものは以前にご紹介していますが、改めて読み返してみます。

http://bcj.way-nifty.com/xbrl/2008/06/jicpa_edinet_xb_d90c.html

1.XBRL文書そのものは監査(レビュー)対象ではない

 XBRL文書は、EDINETに正式に提出されるのですが、実は、XBRL文書自体は監査対象ではありません。また、監査人の多くはXBRLを処理できるツールを持っていません。したがって、XBRL文書(ファイル)の提出を監査人から求められるケースは極めてまれではないかと思います。逆にいえば、XBRL文書が適切に作成されているかどうかは、会社の責任でチェックしなければなりません。印刷会社のXBRL作成機能の中にも、EDINETの登録機能の中にも様々なチェック機能が組み込まれていますので、入力等さえ間違わなければ大丈夫とは思いますが。。。

監査報告書(写)にも記載が・・・。

EDINET上に掲載される監査報告書(写)には、JICPAが定めた決まり文句が入ることになります。そこには、XBRL化された財務諸表が監査対象ではない旨が記載されることになります。印刷会社に任せている場合には問題ないと思いますが、自社で監査報告書のHTML化をしている会社は要注意です。

2.HTML化された財務諸表の提出を求められる

 従来と同じように、XBRL化された財務諸表(XBRL文書)ではなく、HTML化されたファイルまたはそれをブラウザ(IE)を使って紙に印刷したものの提出を監査人から求められます。監査人はHTMLで渡せばそれを画面を見てチェックするか紙に打ち出してチェックするか、または会社が印刷したものを見てチェックすることになります。

 HTMLファイルは、印刷会社の提供する仕組みを使ってXBRLファイルから作成することもできますし、EDINETに仮登録してEDINETの機能を使って作成することもできます。正式にEDINETに提出するのは、EDINETの仕組みを使って作成されたHTMLファイルですが、印刷会社の仕組みを使っても、ほぼ同等のものができます。EDINETへの仮登録は、提出直前ということになる場合もあり、監査に間に合わない可能性もあるので、監査人と相談して、どのタイミングにどちらから作成されたHTMLまたはその印刷物を提供すればよいかを聞いておくといいでしょう。監査人は、もしかしたら印刷会社の仕組みを使ったものをチェックし、それとEDINET上で生成されたHTMLが同一内容かどうかを確かめるといったことをやるかもしれません。

 今回のXBRL化の対象はあくまで財務諸表本表なので、それ以外の部分は、従来と全く同じ扱いになります。

3.勘定科目の新旧対照表を作成しておく

 四半期は当期が初めてなので関係ないかもしれませんが、期末において、XBRL化に伴い勘定科目をEDINETタクソノミに定義されている科目に変更する場合に、監査人は、その変更が妥当かどうかを検討することになります。変更の理由はすでに金融庁より「正当な理由による変更」として取り扱うことが明確にされていますので、あとはその勘定科目で表示して本当にいいのかということを判断することになります。その際に、新旧対照表、または組替表等を作成提示し、変更点が明確にしておくとよいのではないかと思います。

 決算監査時は内部統制監査もあり忙しいので、早めに監査人に相談しておくとよいでしょう。

4.財規様式の改正に注意

 この四半期から財規等に定められている財務諸表の様式が大幅に変更になっています。今までのような罫線がありません。また、株主資本等変動計算書が縦型になっています。百分比、構成比の記載もなくなりました。

http://bcj.way-nifty.com/xbrl/2008/06/xbrl_c416.html

 いずれも、XBRL化に対応した改正ですが、これを「見栄えが悪い」ということで、従来どおりの様式でHTMLで作成するのはNGです。いかに見栄えが気に入らなくても、EDINET上でXBRLから自動的に生成されるHTMLをイメージして財規様式が作られていますので、あくまでXBRLからEDINET上でHTMLを作成していただく必要があります。社内の偉い方や監査人の偉い先生には、事前に改正の趣旨をよく説明しておきましょう。

5.内部統制報告制度(J-SOX)における取り扱い

 以前、XBRL化作業も決算財務報告プロセスとして評価対象になる可能性があるということを述べたことがありましたが、XBRL文書そのものが金商法上の正式な開示書類ではないという取り扱いになったため、従来と同じようにHTMLファイルを画面表示または印刷して、原稿とあっているかをチェックしていれば、印刷会社を外部委託先としてその内部統制を評価する必要がないといえるのではないかと思われます(全くの個人的見解ですが)。確かに、印刷会社の提供するITを利用して有価証券報告書等のHTMLファイルを作成していますが、だからといって、そのITに係る統制を評価しなくても、原稿と結果があっていることを確認すればそれでよい。XBRL文書は、本来画面表示や印刷しただけではその正確性は確かめることができないのですが、どちらかといえば、HTMLファイル作成のための中間生成物、副産物のような扱いで提出だけは強制という法的な位置づけになっているようなので、内部統制評価上無視しても。。。

ちなみに、EDINETのXBRLダウンロードページを見ると

「XBRLデータのうちEDINETにて公衆縦覧に供されていない情報については、金融商品取引法上で定められた開示情報ではありません。当該データは、利用者の責任において利用頂くことにご留意下さい。 」

とあります。

6.英語勘定科目は監査対象外

 XBRL文書から作成されるHTMLファイルには含まれませんが、XBRL文書をXBRLツールで読むと英語の勘定科目を表示させることができます。この英語の勘定科目についても、監査の対象ではありません。あくまでHTMLで表示される科目だけが監査対象です。

 EDINETタクソノミに設定されている英語勘定科目はそのまま使うことになっていますが、勘定科目を独自に追加する場合には、自社で英語勘定科目を設定しなければなりません。その勘定科目名も監査の対象外です。

 EDINETには次の記載があります。

「一覧表よりダウンロードされるXBRLデータに含まれる英語情報については、参考訳であり、その正確性が保証されるものではありません。」

このように、勘定科目の妥当性等を除けば、監査対応自体はいままでとあまり変わらないということになります。

いずれにせよ、初年度で監査人も十分に理解していない可能性もあるので、できるだけ早い段階で対応を協議しておくことをオススメします。

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2008年7月 9日 (水)

TDnetでXBRLデータ公開始まる

7月7日より東証の新TDnetが稼動し、XBRL形式による適時開示書類が参考情報として正式に公開され始めました。

栄えある(?)第1号は、株式会社 メディアクリエイトの「業績予想の修正に関するお知らせ」のようで、10:05に開示されています。

その後、続々と開示が行われています。3月決算が一段落した直後だけに数は少ないですが、新しい仕組みを立ち上げるタイミングとしてはこういう時の方がよいのでしょう。

決算短信(1枚目)だけでなく、業績予想修正も提出されているようです。

東証ホームページで評価版ビューワーなどが配布されていますが、利用条件を見るとどうやら本番の閲覧というのは許諾されていないようで、製品版を購入しなければならないということに今のところはなっているようです。

http://www.tse.or.jp/rules/td/xbrl/data/software.html

第一歩としては画期的ではありますが、これだけの情報ではあまり有用性がなく、EDINETでの導入を踏まえた財務諸表の公開によって、本格的な利用が始まるのではないかという声も聞かれ、どの程度利用されるのか注目です。速報性を考えれば、やはり、決算短信と同時に発表される財務諸表のXBRL化というのが待望されているようです。

なお、従来どおりPDFが正式版ですので、パッと見るだけでしたらPDF版をオススメします。大量のデータを自動的にコンピュータに取り込んで分析するといった場合には、XBRLの方が使い勝手がはるかによいとは思いますが。

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2008年7月 4日 (金)

棚卸資産区分に係る四半期財規改正案へのXBRL化対応

金融庁は、7月2日に「EDINETタクソノミの更新及びEDINETタクソノミ利用に当たっての追加情報について」を公表しました。

http://www.fsa.go.jp/search/20080702.html

これは、今後のEDINETタクソノミ変更に関する基本的な方針と、法令、財規等の改正による対応に関する方針を明らかにしたものです。

  • 原則として、年一回の更新を行う。
  • ただし、法令及び会計基準の改正又はEDINETタクソノミの不具合等のうち緊急の対応を要するものについては、追加的に更新を行う。

次回のEDINETタクソノミの更新は、平成21年春頃を予定しているそうです。

また、6月12日に公表された財規等の改正案のうち、たな卸資産関係の科目表示区分の変更及び「工事契約に関する会計基準」に係る取り扱い(平成20年6月12日公表 財務諸表等規則等の改正案への対応について(案))が示されています。

(6月12日改正案) http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080612-3.html

これらについては、平成21年3月31日前に終了する四半期会計期間に係る四半期財務諸表について適用することができることとされており、財規等の改正が第一四半期に係る四半期報告書の提出に間に合えば、今まさに作成が始まっている第一四半期に係る四半期財務諸表から適用されることができますので、それにあわせてはやめにXBRL化に係る取り扱いも示しておく必要があるということではないかと思われます。

現行規則では、四半期連結財務諸表の表示区分が年度連結財務諸表の表示区分より細かくなってしまっているというおかしなことになっているので、それを正す意味でも四半期財務諸表における先行適用を認めざるを得ないと思われますが、もし先行適用するのであれば、比較可能性なり首尾一貫性の観点から、できれば第一四半期から適用する方が利用者にとってはありがたい。ということで、もし、第一四半期に係る四半期報告書作成に間に合うタイミングで財規の改正がなされれば(パブコメの期限は7月14日なのでがんばれば間に合う可能性あり)、あらかじめXBRL上の取り扱いを示しておけば、印刷会社側の対応も比較的容易になり、第一四半期からの適用も可能になる。と個人的には読んでいるのですが。

それはともかく、もし新規則の表示区分に基づき四半期報告書を作成する場合であっても、現在のEDINETタクソノミ(2008-02-01版)にすでに新規則にも対応できるような勘定科目(要素名「MerchandiseAndFinishedGoods(商品及び製品)」および「RawMaterialsAndSupplies(原材料及び貯蔵品)」)が財務諸表語彙タクソノミに用意されているので(改正を読んでかたまたまなのかはわかりませんが)、それを使うことになります。ただし、計算リンクと表示リンクは設定しなおさなければなりません。現行と変更がない科目についてはそのまま使えます(仕掛品)。

実務上は、現行規則通りの表示か改正規則による表示かを各社で決めて印刷会社に指示すれば、計算リンク、表示リンクの設定はやってくれるのではないかと思いますので、提出会社側にはほとんど負担にはならないと思います。

財規の改正がいつになるのかわかりませんが、第2四半期以降または来年度以降のことを考えて、四半期財務諸表作成当初から新規則の表示区分にするという選択肢も念頭においてみてはいかがでしょう。

なお他に、業種別タクソノミの不具合への対応も示されていますが、ほとんどの会社にとっては関係ないと思われます。

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2008年6月25日 (水)

金融庁、内部統制Q&Aを追加

金融庁が、「内部統制報告制度に関するQ&A」を大幅追加しました。今回の追加でなんと50問近く設問が増えて、とても充実しました。http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080624-3.html

大部分は、実施基準も含めて、今まで出されたものをよく読めば読み取れるような類のものが多く、新たに緩和されたというようなものでも取り扱いが明確になったわけでもありませんが、その中でいくつか注目したいものを挙げておきます。

(問22)【評価の対象となる委託業務の例】

具体的に例示されました。『取引の記帳、会計帳簿の作成等に係るコンピューター処理を共同事務センターに委託する場合や年金資産の運用管理を信託銀行に委託する場合など、財務諸表や開示事項の作成の基礎となる取引の承認、実行、計算、集計、記録等に関するもの』

(問29)【内部統制の評価体制】

『評価を実施する者が評価の対象となる業務から独立し、客観性を保っていれば、例えば、同じ部内の別のチームが経営者を補助して評価を実施することは可能である』

内部監査室の人員が不足している場合や海外への対応が難しい場合などに、評価主体の選択の幅が広がり、大規模な組織でなくても対応可能になるかもしれません。

(問33)【取引の流れを追跡する手続の実施】

いわゆる『ウォークスルー』ですが、『経営者が必ず実施しなければならない手続とはされていない。』と書かれています。もともと「監査人が内部統制の整備状況に関する理解を確実なものとする上で、有用な手続」ですので、社内の方が評価を行う場合には、監査人よりはるかに業務に精通している場合も考えられ(多くの場合、ベテラン社員が多い)、したがってウォークスルーをやるまでもない場合もあるでしょう。

また、『監査人は、経営者の評価結果を利用する場合を除き、経営者が具体的にどのような評価方法を行ったかについての妥当性の検証は求められておらず、上記の手続を経営者が実施しないことが直ちに監査人の指摘の対象となることはない。』という記述も重要です。実務上は、監査人が、監査マニュアルに書かれている監査人のための手続を会社側にも求めるケースが少なくないと考えられ、それが会社側の負担増加につながっているという面を考えれば、虚偽記載リスクや統制内容の把握が不十分であると認められる場合を除き、ウォークスルーを行うかどうかは評価主体の状況次第ということが認められる効果は少なくないです。

(問35)【期中における運用評価の実施】

いわゆるロールフォワード。『期中に運用状況の評価を実施した場合、その後、担当者への質問等により、評価対象とした内部統制の整備状況に重要な変更がないことが確認されたときには、新たに追加的な運用状況の評価は要しないものと考えられる。』とありますが、整備状況の重要な変更の有無を「質問等」で確認すればよく、いわゆる1件テストましてや運用テストを行わなくてもよいというのは、運用テストの実施時期の選択の幅を広げるものと思われます。評価対象事業拠点が多く、内部監査室の人員が少ない場合には助かります。逆に、変更がある可能性のある場合には、運用テストを後回しにするということも考えられるでしょう。

(問39)【中小規模企業におけるIT 環境】

『例えば、販売されているパッケージ・ソフトウエアをそのまま利用するような比較的簡易なシステムを有している場合には、個々のITに係る業務処理統制よりも、ITに係る全般統制に重点を置く必要がある』とありますが、この場合の全般統制についての具体的なイメージが相変わらずわきません。全般統制といえば、情報システム部門が管理している大規模で複雑なシステムに適用される統制というイメージになりがちで、パッケージソフトといえば、スタンドアローンPC上で使われており、むしろ「EUC」の範疇に属するイメージで、多くの場合、情報システム部門は面倒見てくれません。スタンドアローンPCに係る全般統制といわれてもピンときません。アクセス管理、データ改ざんされないまたは改ざんを発見するための管理等がIT統制としては考えられますが、EUCレベルでの全般統制のあり方をもう少し具体的に示してもらいたいものです。

(問40)【重要な欠陥の判断(人材不足や書類整備不十分)】

これはかなり多くの会社で気になるところではないかと思います。

『会計処理に関する知識・経験のある人材が不足している場合や会計に関するマニュアルや規程の整備が不十分である場合であっても、直ちに重要な欠陥に該当するものではなく、関連する業務プロセスに係る内部統制にどのような影響を及ぼすかを含め、重要な虚偽記載をもたらす可能性を検討する必要がある。』とありますが、マニュアル、規程の整備はともかく、人員不足、能力不足によって決算書がまともに作れないとなれば、これは「重要な虚偽記載」どころの騒ぎではないですので、果たして重要な欠陥といわないことができるのでしょうか?現実は、監査人が決算書(特に連結)作成を手伝うまたは事実上監査人が作っていたケースも皆無とはいえず、その場合には、監査人がそれをやめてしまえばもはや決算書が作れないのですから、重要な欠陥といわざるを得ないと思いますが、どうなのでしょう?とはいっても、能力がある経理マンを採用することは至難の業で、いつモアでも重要な欠陥が是正されないということになってしまうのですが・・・。

(問42)【外部の専門家の利用】

(問40)とセットの設問ですが、監査人以外の外部の専門家の利用はそれによってただちに重要な欠陥にならないとのことなので、人員を採用するより、こちらの方が現実的かもしれません。とはいえ、この類のサービスが果たしてどれだけあるのか、中小企業の記帳代行をやっている税理士事務所で連結財務諸表の作成は可能なのでしょうか?

(問43)【重要な欠陥の判断(監査人に対する照会・相談)】

二重責任の原則や独立性の観点から認められる範囲で監査人に照会、相談したら重要な欠陥などというバカなことは常識的にありえないのですが、責任逃れのために照会、相談に応じない監査人が増えてくるとなれば、そういう過度に保守的な対応への歯止めとしては意味のある項目かも知れません。実質的には「連結財務諸表作成」に近いことを監査人がやっていても、「監査人の指導性(誤りの修正指示)」「紹介・相談への対応」の範囲で説明できるなら、それが一番現実的かもしれません。

(問44)【識別するリスクの内容】

これは会社にとってありがたい項目です。『業務プロセスにおいて、すべてのリスクを網羅的に把握してこれを低減するための統制を識別することまでは求められておらず、リスクのうち重要な虚偽記載が発生するリスクとこれを低減するための統制を把握することで足りる。』とあります。RCM上ですべての虚偽記載リスクを洗い出した上で、重要かどうかを判断するというやり方を求めている監査人もいますが、それが筋とはいえ、そこまでやらなくても、重要なリスクがRCM上に洗い出されていればそれ以上は求めないということであれば、ある程度リスクの絞込みをした上でRCM等を作れますからずいぶん楽になると思います。

(問45)【期末日後の重要な欠陥の是正措置】

これは、特に決算財務報告プロセスに重要な欠陥があって、期末決算までに是正されたケースでは、整備状況としては期末日までに是正が確認でき、運用テストは是正後の期末決算作業における運用状況をつかって行って問題なければ期末には有効であるといえるということで、助かります。

(問47)【関連書類への印鑑の押印等】

これは悩ましい問題ですが、「すべての関連資料」への押印は必要ないとしながらも、、『経営者による評価や監査人による監査が実施できる記録が保存』する必要はあるので、かなりの負担感は残ります。まして上級管理職や経営レベルの方の押印であればなおさらで、かえって統制が形骸化してしまわないかという懸念はあります。

(問49)【ダイレクト・レポーティングの不採用】

今回、初めて『通常、評価範囲や評価対象となる統制上の要点は経営者と監査人で一致することになり、経営者が評価対象としていない統制上の要点を監査人が独自に追加検証することにはならず』という記述が登場し、なぜダイレクトレポーティングを採用しないことで、米国より負担が軽くなるのか、ということが理解されやすくなったのではないでしょうか。

(問50)【監査人の監査の開始時期】

『内部統制の整備状況及び運用状況の有効性の検証については、経営者の評価がすべて完了していない場合であっても、監査人は検証することが可能である』というのは、会社側にとっては助かります。3点セットさえできていれば、監査人が先に整備状況等について検討し、その結果を会社にフィードバックし、問題点が是正されるという効果も期待できますし、会社の評価時期の選択肢も増えます。ただ、効率性からすると、会社が評価した後の方がやりやすいとは思うので、監査人がすんなり認めるかは疑問です。

(問55)【中小規模企業における内部統制の記録】

(問56)【中小規模企業における職務分掌に係る代替的な統制】

この2問は、「監査人の対応」について触れたものですが、評価における対応については何も言っていません。監査人が、監査マニュアルに従って中小規模会社にも一律に大規模企業並みの内部統制の記録や職務の分離を求めることに対し、釘をさしたということでしょうか。評価における取り扱いについても述べてほしかったです。

(問65)【監査役等に対する報告の方法や時期】

(問66)【監査役等の監査報告の後に発見した不備】

会社法と内部統制報告制度の関係ですが、この2問によってスケジュール感がずいぶん明確になったことは評価できます。

『監査人は、通常、会社法監査終了時点において大部分の内部統制監査の手続は終了していることが想定されるが、会社法監査に関連しない部分(例えば、有価証券報告書の作成に係る決算・財務報告プロセスの評価の検討)については、内部統制監査の手続が終了していないことが考えられる』

ということで、会社法監査終了時点までにすべての内部統制評価、監査手続を終了させる必要ないということがわかります。適用初年度において、決算財務報告プロセスのように前年度の評価結果を利用することができない場合には助かります。

以上です。いままで監査人から指摘を受けたこととずいぶん違うと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その場合には、是非これを見せて協議することをオススメします。

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2008年6月 9日 (月)

XBRL対応財規、四半期財規等改正

6月6日、EDINET XBRL化に対応した財務諸表等規則、連結財務諸表規則、四半期財務諸表等規則、連結四半期財務諸表規則などが改正公布されました。金融庁HPに掲載されています。

http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080606-1.html

実質的な変更ではないのですが、

・EDINETタクソノミの勘定科目表記にあわせた(例えば、勘定科目のあとに「純額」とつけるなど)

・大項目のローマ数字を削除した

・いままで2列だったものが1列で表記→貸倒引当金などで控除後の「純額」を表す勘定科目ができた&合計を表す科目ができた

・構成比、百分比がなくなった

・株主資本等変動計算書が横型から縦型になった

・罫線がなくなった

XBRL化のパイロットプログラムに参加された方、及び試験的に公開されていたXBRLデータを閲覧された方はおわかりかと思いますが、XBRL形式から生成されたHTML形式は、今回の新しい様式に対応しています。

海外の財務諸表には日本の財務諸表のように罫線がなく、見かけは海外のものに近くなったといえます。

日本の罫線文化は根強く、それがXBRL化の障害にもなるとさえいわれた時期もありましたが、このように規則そのものが変わってしまえば、罫線文化にこだわりのある方々でもあきらめざるを得ないのではないでしょうか。

これで、制度面での対応はすべて終わりました。

あとは第一四半期報告書の提出を待つばかりです。

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2008年6月 3日 (火)

JICPA EDINET XBRL化に伴う留意点公表

日本公認会計士協会は、5月20日に「EDINETへのXBRL導入に伴う財務諸表作成プロセスの変更及び監査人の留意点について」を公表しました。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_1006.html

EDINETにおける財務諸表のXBRL化は、事実上3月決算会社の2008年度第一四半期に係る四半期(連結)財務諸表から強制されますが、監査人による四半期レビューの取り扱いと並んで、XBRL化への対応がどうなるのか注目されていましたが、ようやく公表され、これで制度上の対応はほぼ終了したといえます。

基本的には、最終的にEDINET上で公衆縦覧に供されるのがXBRL形式のファイルからEDINET上で自動的にHTML形式に変換されたものであるということで、途中でXBRL形式のファイルが介在するということ以外は、従来の枠組みとなんら変わりません。また、XBRL化の対象は財務諸表本表のみで、注記や附属明細表といった監査対象部分は従来どおりです。

ただし、従来は、印刷会社で作成されたHTML形式の財務諸表を印刷してチェックした上で、それに監査報告書を袋綴じするなどして監査対象とした財務諸表を確定することが行われていましたが、今後は、HTML化がEDINET上で行われるため、EDINETでHTML化したものを印刷して綴じこむか、XBRL形式のファイルから印刷会社のほうでHTML化したものをブラウザの印刷機能で印刷するか、または各社で用意したXBRLツールを使って印刷するか、それとも、XBRL化する前の原稿を印刷して監査報告書と綴じこむか、といったことを考える必要があります。XBRL化の手順やスケジュールは印刷会社によって異なると思いますので、印刷会社から情報を得た上で、監査人と監査スケジュールや財務諸表の受け渡しなどについて協議するのがよいのではないかと思われます。

なお、監査人が監査対象とする財務諸表は、提出会社の適切な機関によって承認されたものであることが望まれるとされています。したがって、監査人としては、少なくとも財務諸表がどの時点で作成されたのか、またどのような手続によって承認されたのかを確認できるような手段を講じることが必要です。上場会社側では、会社法上の計算書類と異なり、いままで有価証券報告書に掲載される財務諸表を承認する手続が不明確なケースがあったかと思いますが、J-SoXの決算財務報告プロセスの整備の一環として、有報ベースの財務諸表や有価証券報告書の承認手続きを明確にし、承認の証跡を残しておくことが必要かと思われます。

この文書には、監査人がXBRL化に対応するために必要な最低限の知識も掲載されています。金融庁のEDINET関連文書にも書いてあることではありますが、あまりに分量が多く、読むのも大変だと思われますので、「ここだけは押さえておきたい」という上場会社の経理担当者の方にもおススメです。

まだ、前年度の有価証券報告書の作成中かと思いますが、そろそろ四半期財務諸表の勘定科目表示などについて検討し、監査人と協議しておいた方がよいのではないかと思います。その際にも、本文書を参考にしていただければと思います。

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2008年4月20日 (日)

金融庁など内部統制報告制度相談・照会窓口設置

金融庁、日本公認会計士協会、日本経済団体連合会は、共同で「内部統制報告制度相談・照会窓口」を設置しました。電話、FAX、電子メール、郵送により相談・照会できるそうです。

くわしくは

http://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/internal-control.html

個人的には、どんどん利用した方がよいと思います。監査人によっていうことがばらばらだったり、初期のUS-SoX的な考え方に引きずられたりということが無きにしも非ずで、その結果過度な負担がかかるということもありうるので。

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2008年4月 3日 (木)

IT全般統制の不備の考え方をJICPAが公表

ついにJ-SoX本番年度に突入してしまいました。

とはいえ、まだまだIT全般統制の整備がスムーズに終わっていない、または監査人やコンサルから会社の実態に照らして非現実的な要求を突きつけられて途方にくれている会社も中にはあるのではないかと思います。

そんな中、日本公認会計士協会からIT委員会研究報告第31号「IT委員会報告第3号「財務諸表監査における情報技術(IT)を利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」Q&A」の改訂版が公表されました。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/main/31_1.html

これはあくまで財務諸表監査において監査人がITに係る統制リスクを評価する場合に適用される考え方ではありますが、J-SoXにおいて経営者がIT全般統制をどこまで整備すれば有効といえるのかを考える際に参考になるものと思われます。不慣れな会計士がチェックリストで機械的に「IT全般統制の不備」として扱おうとした場合に、会社の実態を考えた場合に経営者としてどのように対処すべきかという点からも参考になります。

特筆すべきは、「全般統制に不備がある場合の取扱いの考え方の例示」が示された点です。

冒頭で、「全般統制に不備があるとして指摘をする際には、そのシステムの状況や実際に財務諸表の数値にどのような影響があるかを考慮して意見を述べることが肝要です。」と述べています。経営者がIT全般統制の評価を行う場合にも、同じことがいえると思います。

具体的には以下の3点についてです。

① バックアップデータの保管

② アクセスログの取得

③ 職務の分離と権限の分掌について

① バックアップデータの保管 については、「バックアップデータの外部保管と混同される場合がありますが、財務報告目的のリスク評価においては、財務報告の作成のための基礎データが全て失われるリスクを低減することにあります。よって、要請される管理レベルは、財務報告目的としては、データの復旧が可能なレベルです。」と書かれており、必ずしも外部にバックアップを保管しなければならないということではない、と考えられます。

② アクセスログの取得については、「情報システムに関するあらゆるアクセスログをとることが必須ではありません。アクセスログを取得し保管することが統制の目的ではなく、正当な職務権限による財務データへのアクセス以外の不当な入力や改ざんが無いかを監視することに意味があります。」と書かれています。アクセスログをとっているだけではダメで、それを使って財務データへの不正アクセス、改ざん等がないかを確かめる統制(モニタリング)があることが必要とされます。逆にいえば、それが可能な範囲内でアクセスログ等を取得、保存しておけばよいということにもなります。

「ログはあくまで事後的な発見的統制であり、正当な権限のある入力者でない人が入力できないような防止的な統制、アクセス権と入力の職務権限が一致している等の統制と組み合わせて財務報告目的のリスクを低減することが重要です。」

とも書かれています。

情報セキュリティの観点からあらゆるアクセスログを保存することを求められるケースもありますが、J-SoXにおいてはあくまで上記のような発見的統制としてのモニタリングが可能になるような範囲内でアクセスログを取得、保管し、モニタリングを行っていれば不備とはならないということかと思います。

③ 職務の分離と権限の分掌については、「職務の分離と権限の分掌は、職務を分離することが内部統制の目的ではなく、兼務すると牽制機能が働かなくなる職務を分けることにより、財務報告の正当性を確保することが目的です。よって少人数で職務の分離が困難な場合については全体として財務諸表に与える影響を考慮して、リスクとその統制の有効性を検討し、職務の分離と権限の分掌の不備を補完する統制を検討することになります。」と書かれています。これは、先日金融庁から公表された「11の誤解」にもかかれている小規模組織における職務の分離等の考え方とも一致します。特に、開発・プログラム保守と運用の職務の分離については、小規模企業ではIT部門の人員が少なく、これを教科書どおりに実現することは極めて困難な場合も少なくないと思われますが、「プログラム保守の正当性、つまり、不正なプログラムの作成をどのように防止もしくは発見する統制があるかを検討することになります。」と書かれている通り、プログラム変更には管理者が必ず、事前に承認することや、プログラム保守の記録を取り、管理者が確認するなどの補完統制について、リスクが十分に低減されているかを評価することになります。

とはいえ、このような補完統制ですら十分に実施できる状態にない場合も少なくないと思われますので、職務の分離で行くか、補完統制で行くかをよく考えた上で改善することになります。

もう一つ、外部委託先の内部統制の評価に、いわゆる「18号報告書(「内部統制の整備状況報告書」または「内部統制の整備及び運用状況報告書」)」を用いる場合の考え方も書かれています。18号報告書は、あくまで、財務諸表監査の中で実施される統制リスクの評価の一環として実施されるものであり、委託業務に係る内部統制の認証業務でもなければ、経営者が内部統制評価を行う場合に利用することを想定した業務でもありません。といいながら、一方で同じJICPAから公表された監査保証実務委員会報告第82号では、「その他受託会社からの報告書の例としては、日本公認会計士協会が公表している監査基準委員会報告書第18号「委託業務に係る統制リスクの評価」(以下「監査基準委員会報告書第18号」という。)に定める「内部統制の整備及び運用状況報告書」、米国公認会計士協会(AICPA)が策定した監査基準書第70号(SAS70、改訂後AICPA Professional Standards Vol.1、AU sec324)による報告書等の諸外国の制度における報告書が考えられる。」とも書かれており、少々整合性が??なような気もします。

また、、「虚偽表示リスクを評価するには、「内部統制の整備及び運用状況報告書」を入手し、検討する必要があります。」とあるとおり、整備状況のみならず、運用状況についても検討する必要があるのは、委託業務でも社内で行っていても同じです。

以上、ポイントだけを挙げましたが、とにかく、これを熟読して、監査人のチェックリストに付き合って形式的でコストに比べ実効性が乏しかったり過度な統制にならないよう、しっかりとリスク評価と対応を行っていただきたいと思います。

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2008年3月20日 (木)

監査法人に対する検査結果を読む

金融庁の公認会計士・監査審査会(CPAAOB)が、2月27日に「監査の品質管理に関する検査指摘事例集」を公表しました。

http://www.fsa.go.jp/cpaaob/shinsakensa/kouhyou/20080227.html

正直これを読むと、このような調子で内部統制監査が果たして実施できるのだろうか?という気になってきます。それ以上に、監査法人ですらこんな状況なのに、果たして経営者が自ら内部統制の評価を適切に実施することなどできるのだろうか?という懸念もあります。

一方、これらの指摘事項がすべて解決するような監査を行ったらJ-SoXはどうなるか?ということも考えておきたいと思います。特に「5.監査業務の実施」については、監査を受ける立場の上場会社にも関係してくることですので、是非目を通しておいていただければと思います。

「(1) リスク・アプローチに基づく監査計画の立案② 重要な虚偽表示のリスクの評価」については、内部統制報告制度への対応にも影響を及ぼす可能性があります。というのも、上場会社側に重要な内部統制上の欠陥があると、もはや財務諸表監査を実施することが事