昨日、企業会計審議会内部統制部会より、内部統制評価・監査基準、実施基準最終案が明らかにされました。企業会計審議会総会で最終決定となります。金融庁ホームページに掲載されています。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/naibu/20070131.html
昨日午前中に用事があって、霞が関合同庁舎4号館に行ったら、本日の会議予定のところに企業会計審議会内部統制部会の開催予定が書いてあったので、ひょっとしたらと思いましたが。開催が夕方だったため、HP掲載も今日になったのでは。
それはともかく、中身をみるとMS-Wordの修正履歴をそのままPDF化されて見ることができるようになっています。これはとても助かります。今回のITに関する変更箇所を中心に、独断と偏見で気になった点を。
全体的に細かいところで表現の適正化、字句の整合性の確保が行われているという印象です。
1.実施時期の明記
「本基準及び実施基準は、金融商品取引法により導入される内部統制報告制度の適用時期と合わせ、平成20年4月1日以後開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用する。」
と明記。(前文)
2.内部統制報告制度の目的(実施基準P.4)
「金融商品取引法で導入された内部統制報告制度は、経営者による評価及び報告と監査人による監査を通じて財務報告に係る内部統制についての信頼性を確保しようとするものであり、」
表現を変えただけにも見えるのですが。「財務報告に係る内部統制についての信頼性」という概念が出てきていますが、「内部統制についての信頼性」という言い方は、検索したところ全文を通じてここにしか出てきません。一般的に使われている用語ではあるのですが、具体的にどういうことをさすのか、有効性と何が違うのか、など説明がほしいところです。評価するのはあくまで内部統制の有効性ですが。。。
3.統制環境の有効性を確保するためのITの利用(実施基準P.16)
「一方で、ITの利用は、例えば、経営者や組織の重要な構成員等が電子メール等を用いることにより、容易に不正を共謀すること等も可能としかねず、これを防止すべく組織内の通信記録の保全など適切な統制活動が必要となることにも留意する必要がある。」
この例示は、私もどうかなと思っていました。通信記録を保全するだけでは防止にはならないような気はしますし。もっとも、本当にやばいことやる人は、社内メールなど使わないとは思いますが。
4.重要な欠陥の判断指針(実施基準P.31)
ずいぶんわかりやすい表現になったと思います。もっとも、それでも「わかる人にはわかるようになった」という感じではありますが。
5.業務プロセスに係る評価の範囲の決定(実施基準P.35)
・総勘定元帳から財務諸表等を作成する手続
これはわかりやすい!ついでながら、XBRL化する作業は、ここに含まれるのではないかと思います。
6.② 評価対象とする業務プロセスの識別(実施基準P.37)
「一般に、原価計算プロセスについては、期末の在庫評価に必要な範囲を評価対象とすれば足りると考えられるので、必ずしも原価計算プロセスの全工程にわたる評価を実施する必要はないことに留意する。」
確かに期末の在庫評価だけのことを考えればそうかもしれませんが、逆に言えば、期末在庫が残らない場合には、原価計算プロセスの全工程にわたる評価を行わなくてもいい?建設業とかソフトウェア開発受託業のように個別原価計算を行っているところでもそうなのでしょうか?いまいち意味がよくわからないので、この部分を追加した趣旨というのを是非聞いてみたいです。
7.「流れ図」
フローチャートを「流れ図」という言葉に替えたようなのですが、何もそこまでしなくても・・・。フローチャートの方がいまや一般的のような気が。
8.全社的な内部統制に不備がある場合(実施基準P.50)
「d.ITのアクセス制限に係る内部統制に不備があり、それが改善されずに放置されている。」
から次のように変更
「d.財務報告に係るITに関する内部統制に不備があり、それが改善されずに放置されている。」
確かに原文は全社的統制とはいえないので、修正する必要はあるものの、修正後の事例というのもいまいちぱっとしない。こういうこというなら「ITに関する」に限る必要がないのかな。というところでなかなか難しい。
9.記録の保存(実施基準P.54)
「適切な範囲及び方法(磁気媒体、紙又はフィルム等のほか必要に応じて適時に可視化することができる方法)により保存することが考えられる。」
電子化して保存するケースを想定していると思われますが、媒体の話と方法の話と見読性要件が一緒に書かれているのでちょっとわかりにくい。e-文書法とか電子帳簿保存法のいいまわし(見読性)に合わせてくれるとありがたいのですが。電子化されている場合には、「見読性」は保存方法と言うよりは、保存するファイル形式に応じた閲覧用アプリケーション及びハードを用意し、必要な時にいつでも目で見るために使えるようにしておくということかと思いますがどうなのでしょう?一応、法律に基づいて行う制度における書類等の保存に関する記載なので、やはり、法令で使われている「見読性」要件に準じた書き方にしていただければ。内部統制の世界で「可視化」というのは、単に目で書類が見えるということではない、もっと深い意味があると思いますし。
10.ロ. ITに係る全般統制の評価の検討(実施基準P.73~74)
「なお、販売されているパッケージ・ソフトウェアをそのまま利用するような比較的簡易なシステムを有する企業の場合には、ITに係る全般統制に重点を置く必要があることに留意する。」
これも今回加えられたようですが、なぜこれが加えられたのか、趣旨を知りたいと思います。まるでパッケージソフトの評価は監査人はしなくてもいいといっているようにも思えるのですが、中小企業用会計パッケージソフトの中には、業務処理統制があまり組み込まれておらず、データの改ざんが容易で改ざんの履歴が残らないようなものもないきにしもあらずなので(入力情報の完全性、正確性、正当性等を確保するための手段があまり組み込まれていないなど)、機能をよく把握しておかなければならないと思います。ただし、このあとの業務処理統制のところに
「また、ITを利用して自動化された内部統制については、過年度の検討結果を考慮し、検討した時点から内部統制が変更されていないこと、障害・エラー等の不具合が発生していないこと、及び関連する全般統制の整備及び運用の状況を検討した結果、全般統制が有効に機能していると判断できる場合には、その結果を記録することで、当該検討結果を継続して利用することができる。」
というのがあり、パッケージソフトは、基本的にユーザー企業では変更ができないので、導入時に業務処理統制を評価してしまえば、あとは全般統制だけ評価すればよい、とも読めるのですが、その理解で正しいのでしょうか?でも、中小企業用の比較的簡易なパッケージソフトには、もともとITを利用して自動化された内部統制」があまりなく、手作業との組み合わせでの統制が中心になると考えると、果たして全般統制の評価だけで大丈夫か不安が残るところです。いままでの監査実務でも実際には会計パッケージソフトの評価というのはあまり行ってこなかったのですが、本当は必ず行わなければならないともいわれていました。
実際に、変更履歴を残さない機能をオプションとして持っているパッケージ会計ソフトウェアがあり、上場会社でも電子帳簿保存法を適用しない場合には、変更履歴を残していない可能性がありますが、監査上、それでよいのでしょうか?会計システムに係る内部統制の不備は、即重要な欠陥に結びつきうるので、慎重な対応が必要ではないかと言う気もするのですが。中小企業は処理誤り及び修正が多いため、いちいち履歴を残しておくと帳簿がみづらくなるということかと思いますが、上場会社の場合には修正件数などというのも内部統制のレベルを図る目安になると思いますし、だいたい、修正履歴を残したらみにくくなるほど修正が多いのであれば、重要な欠陥とまではいえないものの、レベルアップが直ちに必要といえるでしょう。
「全般統制に重点を置く」ということにしたとしても、では、業務処理統制はどの程度までみればいいのかがいまいちわからない。実証テストを省略できるとかそういうことなのか。あとは、会計士協会がIT委員会報告等で出すのでそれを参照ということなのでしょうか?
それと、経営者の側からしてみれば、ある会社の会計パッケージソフトを買って使っていたら、それが「重要な欠陥」になってしまった、ということでは困るわけで、重要な欠陥にならないための最低限のコントロール機能が組み込まれた会計パッケージソフトを選ぶための目安みたいなものが必要なのではないかと思いますし、そういうことが前提にあって監査人も全般統制に重点をおくことができるのではないかと思いますが、この目安が正直ないのが現状。経産省あたりでガイドライン的なものを作ってくれるとよいのですが。
もしかして、このように思うのは読み方がそもそも間違っている(誤解)のでしょうか?どう理解していいのか、あまり自信がありません。
どなたか教えてください!!!!!
11.小規模企業(前文P.6~7)
「なお、実施基準では、企業等を取り巻く環境や事業の特性、規模等に応じて、内部統制を整備し、運用することが求められており、内部統制の構築・評価・監査に当たって、例えば、事業規模が小規模で、比較的簡素な組織構造を有している企業等の場合に、職務分掌に代わる代替的な統制や企業外部の専門家の利用等の可能性を含め、その特性等に応じた工夫が行われるべきことは言うまでもない。」
小規模企業に例外を!という願いもむなしく、原理原則論で押し通された、と解釈する向きもあるようですが、小規模上場会社での不祥事がこれだけ多発していると、おそらく絶対に譲ることができないところだったのでは、と思います。むしろ、この制度そのものが小規模企業、特に上場して間もないようなベンチャー企業に向けられていることは明らかで、これ以上、ベンチャー企業で不祥事が発生することは、ベンチャー育成機運、さらにいえば、新事業による産業活性化という国策の足かせになりかねないという危機感はあるのではないかと思います。結局、監査人やコンサルの腕の見せ所、ということになるかと思うのですが、果たしてできる人がいるのか。。。このネタは後日取り上げたいと思います。
と、こんな感想です。
あとは、内部統制報告書の雛形が出るのを待つばかり。最終成果物のイメージがわかないと、いまいち全体の流れがつかめません。監査報告書の方は監査証明府令とJICPAの方で出されるのでしょうか。
いかん、こんなこと書いている場合じゃない!チェックしなければならないものがこんなにあるのに・・。
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