金融庁、内部統制Q&Aを追加
金融庁が、「内部統制報告制度に関するQ&A」を大幅追加しました。今回の追加でなんと50問近く設問が増えて、とても充実しました。http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080624-3.html
大部分は、実施基準も含めて、今まで出されたものをよく読めば読み取れるような類のものが多く、新たに緩和されたというようなものでも取り扱いが明確になったわけでもありませんが、その中でいくつか注目したいものを挙げておきます。
(問22)【評価の対象となる委託業務の例】
具体的に例示されました。『取引の記帳、会計帳簿の作成等に係るコンピューター処理を共同事務センターに委託する場合や年金資産の運用管理を信託銀行に委託する場合など、財務諸表や開示事項の作成の基礎となる取引の承認、実行、計算、集計、記録等に関するもの』
(問29)【内部統制の評価体制】
『評価を実施する者が評価の対象となる業務から独立し、客観性を保っていれば、例えば、同じ部内の別のチームが経営者を補助して評価を実施することは可能である』
内部監査室の人員が不足している場合や海外への対応が難しい場合などに、評価主体の選択の幅が広がり、大規模な組織でなくても対応可能になるかもしれません。
(問33)【取引の流れを追跡する手続の実施】
いわゆる『ウォークスルー』ですが、『経営者が必ず実施しなければならない手続とはされていない。』と書かれています。もともと「監査人が内部統制の整備状況に関する理解を確実なものとする上で、有用な手続」ですので、社内の方が評価を行う場合には、監査人よりはるかに業務に精通している場合も考えられ(多くの場合、ベテラン社員が多い)、したがってウォークスルーをやるまでもない場合もあるでしょう。
また、『監査人は、経営者の評価結果を利用する場合を除き、経営者が具体的にどのような評価方法を行ったかについての妥当性の検証は求められておらず、上記の手続を経営者が実施しないことが直ちに監査人の指摘の対象となることはない。』という記述も重要です。実務上は、監査人が、監査マニュアルに書かれている監査人のための手続を会社側にも求めるケースが少なくないと考えられ、それが会社側の負担増加につながっているという面を考えれば、虚偽記載リスクや統制内容の把握が不十分であると認められる場合を除き、ウォークスルーを行うかどうかは評価主体の状況次第ということが認められる効果は少なくないです。
(問35)【期中における運用評価の実施】
いわゆるロールフォワード。『期中に運用状況の評価を実施した場合、その後、担当者への質問等により、評価対象とした内部統制の整備状況に重要な変更がないことが確認されたときには、新たに追加的な運用状況の評価は要しないものと考えられる。』とありますが、整備状況の重要な変更の有無を「質問等」で確認すればよく、いわゆる1件テストましてや運用テストを行わなくてもよいというのは、運用テストの実施時期の選択の幅を広げるものと思われます。評価対象事業拠点が多く、内部監査室の人員が少ない場合には助かります。逆に、変更がある可能性のある場合には、運用テストを後回しにするということも考えられるでしょう。
(問39)【中小規模企業におけるIT 環境】
『例えば、販売されているパッケージ・ソフトウエアをそのまま利用するような比較的簡易なシステムを有している場合には、個々のITに係る業務処理統制よりも、ITに係る全般統制に重点を置く必要がある』とありますが、この場合の全般統制についての具体的なイメージが相変わらずわきません。全般統制といえば、情報システム部門が管理している大規模で複雑なシステムに適用される統制というイメージになりがちで、パッケージソフトといえば、スタンドアローンPC上で使われており、むしろ「EUC」の範疇に属するイメージで、多くの場合、情報システム部門は面倒見てくれません。スタンドアローンPCに係る全般統制といわれてもピンときません。アクセス管理、データ改ざんされないまたは改ざんを発見するための管理等がIT統制としては考えられますが、EUCレベルでの全般統制のあり方をもう少し具体的に示してもらいたいものです。
(問40)【重要な欠陥の判断(人材不足や書類整備不十分)】
これはかなり多くの会社で気になるところではないかと思います。
『会計処理に関する知識・経験のある人材が不足している場合や会計に関するマニュアルや規程の整備が不十分である場合であっても、直ちに重要な欠陥に該当するものではなく、関連する業務プロセスに係る内部統制にどのような影響を及ぼすかを含め、重要な虚偽記載をもたらす可能性を検討する必要がある。』とありますが、マニュアル、規程の整備はともかく、人員不足、能力不足によって決算書がまともに作れないとなれば、これは「重要な虚偽記載」どころの騒ぎではないですので、果たして重要な欠陥といわないことができるのでしょうか?現実は、監査人が決算書(特に連結)作成を手伝うまたは事実上監査人が作っていたケースも皆無とはいえず、その場合には、監査人がそれをやめてしまえばもはや決算書が作れないのですから、重要な欠陥といわざるを得ないと思いますが、どうなのでしょう?とはいっても、能力がある経理マンを採用することは至難の業で、いつモアでも重要な欠陥が是正されないということになってしまうのですが・・・。
(問42)【外部の専門家の利用】
(問40)とセットの設問ですが、監査人以外の外部の専門家の利用はそれによってただちに重要な欠陥にならないとのことなので、人員を採用するより、こちらの方が現実的かもしれません。とはいえ、この類のサービスが果たしてどれだけあるのか、中小企業の記帳代行をやっている税理士事務所で連結財務諸表の作成は可能なのでしょうか?
(問43)【重要な欠陥の判断(監査人に対する照会・相談)】
二重責任の原則や独立性の観点から認められる範囲で監査人に照会、相談したら重要な欠陥などというバカなことは常識的にありえないのですが、責任逃れのために照会、相談に応じない監査人が増えてくるとなれば、そういう過度に保守的な対応への歯止めとしては意味のある項目かも知れません。実質的には「連結財務諸表作成」に近いことを監査人がやっていても、「監査人の指導性(誤りの修正指示)」「紹介・相談への対応」の範囲で説明できるなら、それが一番現実的かもしれません。
(問44)【識別するリスクの内容】
これは会社にとってありがたい項目です。『業務プロセスにおいて、すべてのリスクを網羅的に把握してこれを低減するための統制を識別することまでは求められておらず、リスクのうち重要な虚偽記載が発生するリスクとこれを低減するための統制を把握することで足りる。』とあります。RCM上ですべての虚偽記載リスクを洗い出した上で、重要かどうかを判断するというやり方を求めている監査人もいますが、それが筋とはいえ、そこまでやらなくても、重要なリスクがRCM上に洗い出されていればそれ以上は求めないということであれば、ある程度リスクの絞込みをした上でRCM等を作れますからずいぶん楽になると思います。
(問45)【期末日後の重要な欠陥の是正措置】
これは、特に決算財務報告プロセスに重要な欠陥があって、期末決算までに是正されたケースでは、整備状況としては期末日までに是正が確認でき、運用テストは是正後の期末決算作業における運用状況をつかって行って問題なければ期末には有効であるといえるということで、助かります。
(問47)【関連書類への印鑑の押印等】
これは悩ましい問題ですが、「すべての関連資料」への押印は必要ないとしながらも、、『経営者による評価や監査人による監査が実施できる記録が保存』する必要はあるので、かなりの負担感は残ります。まして上級管理職や経営レベルの方の押印であればなおさらで、かえって統制が形骸化してしまわないかという懸念はあります。
(問49)【ダイレクト・レポーティングの不採用】
今回、初めて『通常、評価範囲や評価対象となる統制上の要点は経営者と監査人で一致することになり、経営者が評価対象としていない統制上の要点を監査人が独自に追加検証することにはならず』という記述が登場し、なぜダイレクトレポーティングを採用しないことで、米国より負担が軽くなるのか、ということが理解されやすくなったのではないでしょうか。
(問50)【監査人の監査の開始時期】
『内部統制の整備状況及び運用状況の有効性の検証については、経営者の評価がすべて完了していない場合であっても、監査人は検証することが可能である』というのは、会社側にとっては助かります。3点セットさえできていれば、監査人が先に整備状況等について検討し、その結果を会社にフィードバックし、問題点が是正されるという効果も期待できますし、会社の評価時期の選択肢も増えます。ただ、効率性からすると、会社が評価した後の方がやりやすいとは思うので、監査人がすんなり認めるかは疑問です。
(問55)【中小規模企業における内部統制の記録】
(問56)【中小規模企業における職務分掌に係る代替的な統制】
この2問は、「監査人の対応」について触れたものですが、評価における対応については何も言っていません。監査人が、監査マニュアルに従って中小規模会社にも一律に大規模企業並みの内部統制の記録や職務の分離を求めることに対し、釘をさしたということでしょうか。評価における取り扱いについても述べてほしかったです。
(問65)【監査役等に対する報告の方法や時期】
(問66)【監査役等の監査報告の後に発見した不備】
会社法と内部統制報告制度の関係ですが、この2問によってスケジュール感がずいぶん明確になったことは評価できます。
『監査人は、通常、会社法監査終了時点において大部分の内部統制監査の手続は終了していることが想定されるが、会社法監査に関連しない部分(例えば、有価証券報告書の作成に係る決算・財務報告プロセスの評価の検討)については、内部統制監査の手続が終了していないことが考えられる』
ということで、会社法監査終了時点までにすべての内部統制評価、監査手続を終了させる必要ないということがわかります。適用初年度において、決算財務報告プロセスのように前年度の評価結果を利用することができない場合には助かります。
以上です。いままで監査人から指摘を受けたこととずいぶん違うと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その場合には、是非これを見せて協議することをオススメします。
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