JICPA内部統制監査指針案公表
日本公認会計士協会(JICPA)は、待ちに待った内部統制監査の指針案をついに公表しました。8月13日まで意見募集中です。
監査・保証実務委員会報告「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」(公開草案)の公表について
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_890.html
さて、あまりに長く難解な文章が続くので、ざっと目を通しただけですが、上場会社の皆様にも是非目を通しておいていただきたいと思います。
基本的には、(当然のことながら)実施基準の枠からは一歩も出ていませんし、先日の日経記事のように「緩和」されているわけでもありません。このタイミングで公表されているということは、おそらく金融庁から出されるであろうQ&Aの考え方とも整合性を取っているはずですので、Q&Aも実施基準の考え方を変更することはないのではないかと個人的には思います。
それはともあれ、まずは、プレスリリース本文に概要が記載されていますので、それをお読みになられることをお勧めします。
ポイントは以下のとおりです。
1.経営者と監査人の協議時期
監査計画の策定より前、具体的には監査対象期間の相当初期の時点か、又は監査対象期間が開始する日以前が考えられること
適用初年度においては、遅くとも来年の3月以前には監査人と協議を行って評価範囲等について決めるということになるのではないかと思います。
さらに、本文では、監査人が監査と同時提供できるアドバイザリー業務(助言)等についても示されています。これによって、監査人が過度に保守的になって助言を躊躇するようなケースも徐々に少なくなってくるのではないかと期待されます。監査人にとっても、独立性の問題がクリアできさえすれば、初年度において内部統制の重要な欠陥や内部統制報告書の不適正が生じるリスクを回避するためにも、ある程度助言をすることも必要だと考えていると思いますので、今後は、監査人とのやり取りがいくらかスムーズになってくるでしょう。
2.内部統制監査の時期
監査人は実施する内部統制の評価の検討の時期等に十分留意する必要があること
逆にいえば、経営者は、監査人の監査実施時期と自らの内部統制評価実施時期について調整が必要になるということです。
3.業務プロセスに係る内部統制の評価範囲
経営者が実施基準に示されたような手続に従い評価対象を適切に識別している限り、選定した重要な事業拠点の企業の事業目的に大きく関わる勘定科目残高のうちに連結財務諸表における当該勘定科目残高に対して、一定の割合(2/3)に達していないものがある場合でも許容されることを具体的な数値を用いて示したこと
これは、実施基準の解釈上認められていたことではあると思いますので「緩和」ということが適切かどうかは疑問ですが、この指針案で具体的な数値を用いて示されたことは非常に重要です。
また、一般事業会社以外の会社の場合の考え方が示されたことも重要です。
4.全社的な内部統制
全社的な内部統制について、まずは、運用状況の評価について監査人が検討を行うことが従来の財務諸表監査と異なることが述べられています。そして、子会社を含む事業拠点における全社的統制の運用状況については、内部統制の同一性をモニタリングする内部監査が良好に運用されていることを前提に、親会社の本社等で評価の検討を行うことになるが、財務報告に係る重要な虚偽記載の発生するリスクが高いと判断される場合に事業拠点への往査の実施を検討することになるとの考え方が示されています。
逆に子会社等の経営的独立性が認められており、内部統制の同一性が認められない場合には、それぞれの事業拠点ごとに往査する可能性もあるということです。監査人が往査するということは、その前に経営者が評価しなければならないということになります。
5.決算財務報告プロセス
まず、全社的統制と同様に、運用状況の評価について監査人の検討対象となることが財務諸表監査と異なるという点について述べています。そして、ここで重要なのは、全社的な観点で検討することが適切と考えられる内部統制を例示するとともに、個別に評価対象に追加することが適切とされる内部統制の例とそれに対して実施する手続を示したこと、及び、決算・財務報告プロセスにおいては、表計算ソフトが広く用いられている現状を踏まえて、マクロや計算式の検証等の検討事項を示したことです。決算財務報告プロセスのうち全社的な観点で評価するものについて、実施基準だけではイマイチ具体性がなく、どうしたらよいのか困っていた向きもあったと思いますが、今回の指針案でそれが具体的にイメージできるようになったことは大変有意義です。
6.内部統制の重要な欠陥における重要性基準値の適用
実施基準に掲げられた重要な欠陥に該当する全社的統制の不備の例が示されていますが、内容的には実施基準と変わりません。ただ、具体的にその影響をどう考えるかについての考え方が示されています。また、「連結税引前利益の概ね5%程度」については、例年と比較して連結税引前利益の金額が著しく小さくなったような場合や事業年度ごとに著しく変動する場合などは、金額的重要性の判断基準として当該数値を機械的に適用することは適当でないことを示し、このような場合には、財務諸表監査における重要性判断基準と同様に、実態に応じ、比率の修正や最近数事業年度の平均値を用いること等を検討する。としています。
これも監査人にとっては極当たり前のことですが、ここで明らかにされたことによって、上場企業側にも考え方が伝わるという意味では大変重要です。これも、「緩和」とはいえないものではあると思います。
以上、ざっとご紹介しました。日経記事の方向性は間違っていなかったものの、実施基準が「緩和」されるというのはいいすぎではないかということが、これを読むとよくわかると思います。
一般の方には至極難解な指針案ではありますが、是非挑戦してみてください。
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