決算財務報告プロセスを振り返る
今年の3月決算作業も最終段階を迎えていることと思いますが、そろそろ、今年の決算作業を振り返りながら「決算・財務報告プロセス」を見直してみてはいかがでしょう?
決算・財務報告プロセスについては、正確には「決算・財務報告に係る業務プロセスの評価」であり、実施基準(参考図2)で、「全社的な内部統制の評価」の次に来ている点に注目すべきであると思います。そして、全社的な観点での評価が適切なものについては、全社的な内部統制に準じて評価し、それ以外の決算・財務報告プロセスについては、それ自体を固有の業務プロセスとして評価することになります。
また、運用状況の評価について慎重な対応が求められています。いかに、個々の業務プロセスについて内部統制を整備・運用しても、肝心の財務諸表を作成する段階で不正や誤謬が生じてしまうようでは意味がありません。
もちろん、監査人は、精査に近い形でかなり慎重にチェックします。内部統制に重要な欠陥があったとしても自ら虚偽記載を発見できるように監査手続を実施します。残高試算表から財務諸表を作成するプロセスや連結財務諸表作成プロセスは、かなり細かくチェックしますので、そこでの誤謬は発見されやすい。しかし、記載されている事項が適切かを確かめることは出来ても、本来記載されるべき事項が記載されているか(記載の網羅性)について確かめることはなかなか難しい。稟議書や取締役会議事録などを閲覧したり、質問したりしながら、会社で何が起きたのかをある程度頭に入れて記載すべき事項にもれがないのかを確かめます。しかし、すべての資料をしらみつぶしに見ることはできませんので、記載すべき事項をすべて把握できるわけではありませんし、さらに、監査上の判断をするための情報の多くは、会社の内部統制によって収集されるため、その情報が間違っていれば監査人は正しい判断が出来ない可能性があります。決算・財務報告プロセスであっても、やはり監査人は内部統制、特に「統制環境」「情報と伝達」に依拠せざるを得ないのです。
ところで、決算・財務報告プロセスの評価をする際に、コントロールの一つとして「監査法人によるチェック」を書く人がいますが、これはご法度です。「監査法人がチェックするから自分たちはチェックしなくてもいい」といっているようなもので、これでは、経営者が内部統制の構築という自らの責任を放棄しているという印象を与えてしまいます。内部統制評価は、監査人のチェックを受ける前に自分たちでどれだけちゃんとチェックするかということを評価するわけで、監査人のチェックというのは内部統制には入りません。
話を元に戻すと、重要な後発事象や資産の評価、負債の見積もりに関する判断に必要な情報などが、どのように経理部門に伝えられ、その情報にどの程度の信頼性があるかというところについて、慎重に検討する必要があります。さらに、このような情報に基づき、どのようなルールに従い、どのようなプロセスで会社としての会計上の判断が行われているか、という点にも留意する必要があります。
ここで気をつけたいのは、このような「情報と伝達」の機能は、財務報告の信頼性を確保する目的のためだけに単独で構築されるものではなく、他の目的のため、例えば、業務の有効性、効率性やコンプライアンス、資産の保全といった目的を達成するためのものであり、「財務報告の虚偽記載リスクの評価と対応」以外の「リスクの評価と対応」という要素が有効に機能するために不可欠なものとして構築されるということです。売掛金の回収遅延や不良在庫の存在、偶発債務の発生などは、財務報告云々以前に資産の保全という観点から対応されるべきものです。
それはさておき、売掛金回収遅延、不良在庫などは、「売上計上」「仕入計上」という会計処理に係る業務プロセスの評価だけでは浮かび上がってこない。フローチャートにも出てこない。ところが、決算・財務プロセス統制の評価において「売掛金の回収可能性評価」「たな卸資産の販売可能性評価」に係る業務プロセスの評価をやると浮かび上がってくる。そしてこれらは、判断を伴うこともあり、財務報告の重要な虚偽記載に結びつきやすい。
監査人が内部統制評価を行う際には、「売掛金回収」に係る内部統制というのは「販売サイクル」の一部として「受注」「販売」などと一緒に評価し、決算・財務報告プロセスということはあまり意識しません。しかし、決算・財務報告プロセスとして認識することで、経理部門への「伝達」や「売掛金評価」と「売掛金回収」の内部統制の関係をより鮮明に意識することができるのではないかと思います。
こんなことからも、決算・財務報告プロセスを他の業務プロセスよりも先にやるという実施基準の(参考図2)に示された順序というのは、よく考えられているな、と思います。
| 固定リンク
« 懐かしい名前 | トップページ | マスターファイル »


コメント