2009年4月 3日 (金)

J-SoX Q&A再追加公表

以前予告したとおり、金融庁は4月2日に、「内部統制報告制度に関するQ&A」の再追加を公表しました。

新たに主として以下の内容の24問を追加。

◇「重要な欠陥」の判断(問68~70、75、77)

◇子会社の売却・業績悪化等により重要な事業拠点の選定指標が一定の割合に達しない等の場合の取扱い(問73、74)

◇内部統制報告書の記載内容(問101~107)

重要な欠陥については、判断基準や金額的影響額の算定方法といったことではなく、実務的に決算早期化の影響でチェック前の決算書を監査人に見せて指摘を受けた場合とか、決算短信の修正があった場合に、直ちに重要な欠陥になるわけではないといったことが記載されています。

「内部統制報告書の記載内容」は、いわば記載例、文例ともいえます。いままでずっと「記載例は公表しない」といい続けてきた金融庁ですが、アンケートや問い合わせの結果を踏まえ、実務の混乱が予想されることに配慮したのでしょう。

一応、「記載内容については、各企業の実情等に応じて記載することが適当であり、記載内容の例については、あくまでも参考であることに留意する必要がある。」という立場は崩していないものの、事実上のスタンダードになるのではないかと思われます。

この中には、監査人の過度な要求(といおうか、実施基準に対する誤解による誤った指導)により、期末直前になって評価範囲の変更を余儀なくされそうになっている上場会社にとっては「救い」となるようなものが含まれています。

例えば

「企業が重要な事業拠点を選定する際の一定割合として、「概ね2/3」というように選定の方針を記載しているのであれば、実績値は不要であり、方針とした一定割合を記載することで足りるものと考えられる。」

というのであれば、業績の変動等があっても2/3を絶対に割り込まないように、保守的に評価範囲を広めに取っておくといったことも必要なくなります。

今回一番驚いたのは、内部統制報告書文例の中で、「内部統制を整備せず評価を実施しなかった場合」の文例が示されていることです。こんなことは元々想定外ではあったはずですが、実際にふたを開けてみると、こういう上場会社も現実に出てくる可能性が十分あるということと、仮に、「内部統制を整備せず評価を実施しなかった」ということで、結論不表明の内部統制報告書を提出し、同じく監査意見不表明の内部統制監査報告書が提出されてもペナルティがないこともあり、初年度はある程度やむなし、という実質的な救済策を提示したともいえます。しかも「やむをえない事情で」評価できなかったということではない以下のようなケースを想定していることには正直驚きを隠しえません。

「財務報告の信頼性に関するリスクの評価と対応を実施しなかった理由は、連結グループ全体において、間接部門を中心に人員を削減しており、連結子会社において経理及び財務の知識・経験を有した者をリスクの評価に従事させることが困難であったためである。」「一方、財務報告に係る内部統制の整備及び運用の重要性は認識しており、これらの人員の制約はあるものの、環境を整備し、今後×年間で評価を完了させる方針である。」

これで許されるなら、今までの苦労は一体なんだったのか?と怒られる方もいらっしゃるかもしれません。整備を数年かけて、ではなく、評価そのものも数年かけてということなのです。

おりしも世界的な不況で、リストラが盛んに行われつつありますが、それで内部統制評価ができなくてもやむなし、というくらいの感じにも見えます。制度は導入するが、実質的には出来なくても仕方がないという妥協です。制度の緩和または「徳政令」といってもいいかもしれません。ただ、元々、評価自体が目的というよりは、内部統制を整備して適切な財務諸表を作成することが目的なので、そういう意味では、極めて現実的な解決をしたのかもしれません。

いずれにせよ、かなり衝撃的な内容も含んでいるので、是非早いうちに目を通されることを強くおススメいたします。

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2009年4月 1日 (水)

XBRL化期末決算の留意事項

3月決算期末を迎え、金融庁と日本公認会計士協会(JICPA)から、相次いでXBRL化に伴う留意事項が公表されていました。

まず、金融庁

「XBRL形式による有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項について(平成21年3月期版)」
http://www.fsa.go.jp/search/20090327.html

内容は以下の通り。

・使用するEDINETタクソノミ

・EDINETタクソノミの更新に伴う勘定科目の変更

・XBRL作成ガイドの改正

・XBRLの対象

・表示方法の変更の取扱い

・個別、連結、中間又は四半期等の各種財務諸表間で共通の勘定科目の取扱い

・株主資本等変動計算書

とにかく、勘定科目が細かく、各社バラバラの個別財務諸表のXBRL化は今回が初めてということで、どのように運用されるか、どのようなXBRLデータが登場するのか。

他にも内部統制報告書をはじめ、改正点が多いので、時間切れで十分に勘定科目をどうするかといった検討や表示方法の変更の記載がおろそかにならないよう、早めに準備するしかありません。最後、財務諸表が間違っていたら、元も子もありません。

次にJICPA

「有価証券報告書に記載される財務諸表等の表示方法の変更等に係る監査人の留意点」
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_1111.html

金融庁のものが有価証券提出会社向けであったのに対し、こちらは監査人向け。金融庁が公表しているガイドラインなどを監査人に理解させ、EDINET XBRL化に伴う勘定科目標準化の流れやEDINETタクソノミの勘定科目表示に変更した場合の「表示方法の変更」の取り扱いについて、正しく理解したうえで、監査上の判断をさせようという狙い。

元ネタは、金融庁の「勘定科目ガイドライン」なので、金融庁とJICPAが書いていることは同じですので、JICPAの方は上場会社の方はお読みにならなくてもいいかもしれません。ただ、監査人と勘定科目変更について協議する際には、JICPAの通達を見せながらやるとよいかもしれません。J-SoXと違って、XBRLの場合には、「米国の提携事務所のマニュアルがこうなっているから・・・」みたいなことは言わずに、金融庁やJICPAのマニュアルにはあえて従わないということはないでしょう。

ただ、監査人が絶対にNo!といわないかといえばそれは全く違います。「継続性」だけを盾に変更を認めないと言っているなら監査人の側がおかしいですが、そもそもEDINETタクソノミ上の勘定科目の選定自体がおかしい場合には、当然監査人は他の適切な勘定科目を選ぶよう指導しなければなりません。あくまでも、勘定科目の選定が適切であることを前提に変更が認められるのです。

難しいのは「似て非なるもの」をどう判断するかです。特に販管費の勘定科目には似たようなものが設定されていますし、どれが一番自社の実態をあらわすか選択に困るケースも出てくるでしょう。であれば面倒なので、今まで使っていた勘定科目を追加するということになるかもしれません。

似たような勘定科目が設定されているのは、勘定科目を標準化しようという流れと同時に、できるだけ各社が難しい勘定科目の追加作業をしなくてもよいようにという配慮もあります。英語の勘定科目を設定しなければならなかったり、設定する項目が多くて間違えたりするリスクが高まります。できればあらかじめ設定されている科目の中から選びたいということもあるでしょう。

さて、当初は決算短信の財務諸表もXBRL化される予定でしたが、残念ながら延期になってしまいました。システム開発の関係と説明されていますが、上場会社の立場からすれば、決算発表までに勘定科目を選ぶだけで精一杯で、自社で勘定科目を追加する作業などまで手が回らない可能性もあったので、6月まで提出期限の余裕がある有価証券報告書を作成する際にじっくりと勘定科目追加作業をしてもらい、それをベースに翌年度以降の微調整を経て提出してもらう方が安全だということにはなると思います。

なお、四半期はXBRL形式で出すことになります。

とにかく、勘定科目を変更する場合には、金融庁とJICPAの上記文書を見せながら、早めに監査人と協議しましょう。

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2009年3月25日 (水)

内部統制報告書記載例が公表か?

いよいよ決算期も近づき、内部統制報告書にどのように記載すればよいのかについて悩み始めている上場会社も少なくないと思います。金融庁では、内部統制が各社各様であるということから、内部統制報告書の記載例を公表しない方針で来たようですが、やはり上場会社からの要望が多いようで、「Q&A」の追加の形で記載例を示す方向で検討しているようです。また、金融庁に問い合わせが多かった事項についても、Q&Aに反映するみたいです。金融庁としては今月中には何とかしたいようですが、もし出たらお知らせします。

また、監査人側の実務指針である監査保証実務委員会報告第82号が改正されました。重要な欠陥の説明や、必要な評価を実施できなかった場合の監査報告書上の取り扱い、IT全般統制の不備の取り扱いなどが追加されています。様々な理由で、上場会社が評価が終わらなかった場合であっても、評価した範囲内で重要な欠陥がある場合には、その旨を内部統制報告書に記載することになりますが、その場合に、監査人は適正意見を出せるかということが問題になります。評価できなかった部分が重要であれば、監査意見不表明にするということのようです。

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/82_3.html

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2009年1月27日 (火)

2009年3月期用EDINETタクソノミ案公表

金融庁から、2009年3月31日以降終了事業年度用のEDINETタクソノミ及び関連資料の改訂案が公表されました。

EDINETタクソノミの更新に伴う各種関連資料(案)の公表についてhttp://www.fsa.go.jp/search/20090126.html

主な改正内容は

・会計基準の新規制定、改正等に伴う財務諸表等規則などへの対応
(たな卸資産会計、リース会計、資産除去債務など)

・四半期、中間などの作成状況を踏まえてのB群科目の追加、業種別タクソノミの見直し

・説明資料の加筆

です。

平成21年2月24日(火)まで意見募集をしています。

追加してほしい勘定科目、説明を加えてほしい事項などについて、意見を提出することになると思われます。

このタクソノミの公表により、3月決算の企業別タクソノミを作成する場合には、2008年版ではなく、この2009年版を改めてインポート(参照)することになります。

改正点だけでも目を通されておくことをオススメします。

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2009年1月23日 (金)

JICPA 内部統制監査実務指針改正案公表

日本公認会計士協会は、内部統制監査実務指針改正案を公表しました。

「監査・保証実務委員会報告第82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の改正について」(公開草案)の公表について
http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/82_2.html

主な改正点は、

・IT全般統制の不備の取り扱い

・全社的統制の不備の取り扱い

・重要な欠陥の判断基準の明確化

ですが、記述は若干詳しくなったものの、なおかつこれだけ読んでも具体的なイメージが思い浮かばないというのが読んでみての実感です。

特に重要な欠陥については、重要な誤謬が「発生可能性」を判断するのがなかなか難しい。統制エラーの発生可能性を運用テストにおける統計的サンプリングである程度推測することはできますが、統制エラーが必ずしも会計処理の誤謬や不正に結びつくわけではないので、統制エラーから財務報告の重要な虚偽記載の発生可能性を推測するのはかなり困難。もちろん、統制エラーによって虚偽記載が生じるケースもありますが、多くの場合、上司がちゃんとみていなくても担当者がちゃんとやっていれば誤謬は発生しません。

などと考えているとますますわからなくなります。

理屈では説明できても、現実にはとても難しい判断です。監査人もとても困惑するのではないかと思うのですが。

理解できるかどうかはともかく、最低限目を通されておくことはオススメします。

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2009年1月 8日 (木)

内部統制は不況に耐えられるか

内部統制の評価基準日まであと2ヶ月ちょっと。

ところが、ここにきて内部統制整備にとっては大逆風が吹いています。いうまでもなく、不況の影響。あちらこちらで人員削減。いまは、期間工や派遣社員を中心とした工場での生産ラインの作業者が注目されていますが、そう遠くないうちに、正社員、派遣社員を問わず管理部門にもメスが入れられることは、過去の例からおおよそ察しがつきます。また、システム統制も抑制されざるを得ないでしょう。

そうなった時に、果たしてここ数年で構築してきた内部統制が維持できるのか、または、重要な欠陥が解消できるのか、といった問題は、どうも表にでてきていないようですが、業務の効率化まで踏み込めていない表面的なJ-SOX対応で済ませてきたところは、もしかしたら耐えられないかもしれません。

また、このような状況下で、「重要な欠陥」を表明することが、株価や企業経営にどのような影響を与えるのかというのも懸念材料です。業績がよく、株価も好調な時であればあまり影響ないかもしれませんが、今のような状況では一体どうなるのか見当もつきません。

人員削減、コスト削減の中で、いかに内部統制のレベルを下げずに維持するか、また、三点セットのメンテナンスや評価要員をいかにして確保するのか、ということを、今から真剣に考えておく必要があるのではないかと思います。

経団連もJ-SOX適用延期の要望などは今のところ出していないようですが、上場会社側の実態というのはどうなっているのでしょう?

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2008年10月22日 (水)

金融庁、第一四半期報告書XBRL化の結果報告を公表

金融庁は、10月21日に「第1四半期に係る四半期報告書におけるXBRLデータの提出結果」を公表しました。

http://www.fsa.go.jp/search/20081021.html

これによれば、初めてXBRL化された四半期報告書の提出は大きな混乱もなく順調に行われたとのことですが、提出されたXBRLデータの一部において改善すべきと思われるものが発見されたそうです。

金融庁では、これら改善すべき事項の例を取りまとめ、既にEDINETへ提出済みのXBRLデータについても、これらに該当するものを発見した場合にはXBRLを修正のうえ再提出を検討するよう呼びかけています。

XBRL化に伴い四半期連結財務諸表規則等が改正になっているにもかかわらず、その趣旨が理解されずに誤って作成している例が見られるようです。

以下、金融庁が掲げている改善すべき事項についてコメントしてみます。具体例は金融庁HPをご覧ください。

1.勘定科目の選択にあたり、EDINETタクソノミの勘定科目を使用せずに、同等の勘定科目を独自の科目として追加している例

(1)EDINETタクソノミの勘定科目と同一表記かつ同一意味(財務諸表における区分及び各種定義等が同一)の勘定科目を追加している例

これは、タクソノミに当該科目があるのを見つけられなかった。並び順が自社と違った。業種が違うなど理由が色々あると思いますが、一般的には、EDINETタクソノミの科目を使う必要があります。印刷会社に自社のやり方が一般的に適切なのかを確認したうえで、訂正及び第2四半期に向け対応する必要があります。

(2)EDINETタクソノミの勘定科目と表記は異なるが、同一意味である勘定科目を追加している例

これについては、今回のEDINET XBRL化に伴う勘定科目変更の取り扱い及びその趣旨を十分に理解していなかったケースが多いのではないかとも思われますが、正当な理由による表示方法の変更ということで認められます。絶対にあってほしくないですが、監査人がこの取り扱いを理解せず誤った指導をしているケースがなかったか懸念があります。これについても、訂正及び第2四半期に向けての対応が必要かと思われます。なお、同一意味かどうか微妙なケースもありますが、そこは監査人と協議ということになるかと思います。同一といえるかどうか微妙な場合に無理してEDINETタクソノミの科目を使うことまでを強制しているわけではありません。

(3)EDINETタクソノミの勘定科目と同一表記かつ同一意味であるが、英語表記の異なる勘定科目を追加している例

これは、当初からある程度予想されたことではあります。つまり、例えば、日本語で「売掛金」といっても、英語では実に様々な科目表記が使われており、また、海外投資家からの訴訟リスクなど考えた場合に、いかに金商法上「参考情報」であってもおろそかにできない、という事情があります。グローバル化した大企業ほどその傾向が強いですから、なかなか解決しないのではないかと思います。参考情報である英語科目表示のために、本来の趣旨がゆがめられるというのは本末転倒ではないかと思います。金融庁としてもやり方の見直しを検討すべきではないかと個人的には思っているのですが。

(4)区分損益を示す勘定科目を追加している例

これについては、明らかに理解不足ということかと思います。時間があれば恐らく印刷会社のほうで修正したのではないかと思われますが、これも訂正・見直しが必要かと思います。

2.企業別タクソノミの設定にあたり、計算リンクの設定を誤っている又は設定が漏れている例

これについては、印刷会社のほうできちっとチェックしてもらうしかないでしょう。

3.報告書インスタンスでの金額設定にあたり、入力値の桁数を誤って設定している例

これは、原因はわかりませんが、表示単位が異なる財務諸表同士を比較する際には円単位をベースに比較するので、おかしな結果が出てしまいます。「金額入力は円単位」「画面表示のための金額単位は別途設定」という考え方を覚えておきましょう。これも、明らかな間違いなので訂正が必要です。

4.提出されたXBRLデータより、一部の財務諸表が欠落している例

これは、提出時の不注意ということになるとは思いますが、XBRLデータを提出しなければHTMLデータも作成されないため、EDINET上一部欠落した財務諸表が画面表示されることになり、仮登録した段階でチェックすればすぐにわかるはずです。また、監査人も正式なものではないものの、自分たちが監査した対象の財務諸表とEDINETに掲載された財務諸表が同一かどうかを確かめることになると思いますので、その段階でも気がつきそうなものですが、どうなのでしょう?

5.その他の留意点

・債権又は固定資産等に係る純額表示又は総額表示の際に使用する勘定科目

これは今回の財規等の改正でXBRL家に伴い変更になった点ですが、純額表示の場合には「(純額)」とついた科目を使用することになります。今までなじみがない科目で、戸惑ったのかもしれませんし、減価償却の表示の仕方がよく理解できていなかったということかもしれません。監査人がHTMLをチェックする時にも気づくはずなのですが。これも、早めに対応しておけば印刷会社のほうである程度指導してくれたはずですので、第2四半期に向け、速めに印刷会社と調整しておくとよいと思います。 厳密にいえば、「(純額)」がついていなければ四半期財規違反ということになり、XBRLデータだけではなくHTMLデータも訂正(つまり訂正四半期報告書)ということなのですが、そこまで求めているのかどうかは定かではありません。

・各企業で追加した勘定科目の英語名称

これも、中小規模の上場会社では英語開示のノウハウがなく、こういうことが起こりうるということはある程度予想はされていましたが、果たして改善されるのでしょうか。

他の項目については、本来印刷会社のほうでチェックしていれば防げたミスではありますが、初めての四半期決算と重なったということもあり、恐らく時間がなかったのでしょう。タクソノミそのものは決算が締らなくても先に作っておくことは可能ですし、第2四半期では第一四半期で作成したものを使うことになるので、今のうちに見直すべきものは見直し、先にタクソノミの修正をしておいた方がよいのではないかと思います。年度決算についても早めにタクソノミを作成し、印刷会社や監査人(表示方法の変更の場合)にチェックしてもらうべきでしょう。

なお、日本公認会計士からは、監査人に対して同様の通達が出されています。

「第2四半期以降のXBRL形式による四半期連結財務諸表等の作成に向けた監査人の留意点について― 第1四半期の四半期連結財務諸表等の分析を踏まえて ―」

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/post_1060.html

こちらにも目を通していただくことをオススメします。監査人とも、事前に該当する事項がないかを確かめておかれてはいかがでしょう。万が一にも「知らなかった」などということはないと思います。

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2008年10月18日 (土)

「重要な欠陥」の影響を憂う

現時点で議論することは時期尚早かもしれませんが、個人的には、内部統制報告書において「重要な欠陥」があり、かつ改善されていない旨が記載された場合に、経営にどのような影響が出るかを、「危機管理」の一環として考えておく必要はないのかということが気になっています。

著名な会計士や学者の先生は、制度の趣旨は、内部統制を改善していくことにあるのだから、初年度はどんどん重要な欠陥を出した方がよいというようなことをおっしゃいますし、取引所も重要な欠陥があることをもって上場廃止の対象にはしないということは明らかにしてはいますが、だからといって、重要な欠陥が次から次へと開示された場合に、上場廃止にならないからいい、で済まされるのでしょうか?昨今の株価の状況や、実体経済の悪化に伴う企業の業績悪化という不安定要因がある中で、仮にそれが経営に直結しない内容であっても、株価にネガティブな影響を与える可能性が皆無といえるでしょうか? 最悪のシナリオでは、株価下落→信用不安→資金繰り悪化→倒産といったスパイラルに陥る可能性はないのでしょうか? もちろん、ゴーイングコンサーン注記に比較すればインパクトは小さいかもしれませんが、ネガティブな情報であることは間違いありません。

時価会計の見直しという超法規的な措置まで取りざたされている中で、果たしてこの経済状況で何が何でもJ-SoXを当期から適用するだけの重要性はあるのでしょうか?業績が急激に悪化する中でコスト負担に耐えられない上場会社が出てきたらどうなるのでしょう?監査人も、経済状況が悪化すれば粉飾のリスクが高まりますから、もっとリスクの高いところにリソースをつぎ込まないと、とんでもない失敗をやらかしてしまわないでしょうか?

と、考えると、状況次第では、適用の1年延期などということも経団連あたりから申し入れをするなどという可能性はないのでしょうか?

これは全くの個人的感覚なので、実際にそうなるかどうかはまったくわかりませんが、何となくそのくらいのことはやってもよいのでは・・・という気持ちはあります。

そもそも、八田教授のように「重要な欠陥」という訳語が適切ではないのではないか、ということをおっしゃる方もいらっしゃいます。あたかも致命的な欠陥があるようなとらえ方をされてしまいますが、致命的ということではないということのようです。つまり、言葉の持つイメージと実際に生じている問題の重要性にはギャップがあるようです。しかしこのギャップは、投資家をミスリードする可能性はあるということ。であれば、なおさら、用語の見直しを行うべきです。用語が不適切であったがために投資家をミスリードし、必要以上に株価に影響が及び、市場の混乱に結びつくようなことを避けるべきではないかと思います。

実務的にも、「重要な欠陥」になるかどうかのレベル感がさっぱり見えてこない。監査人一人ひとりによってレベル感がバラバラ、などという状況では、投資家のミスリードのリスクは高くなる一方。当然、経営リスクも高まってしまうわけで、企業を取り巻く環境事態が危機的な状態の中で果たしてそれだけのリスクを企業に負わせることができるのか。

どういうわけか、新聞などを読んでもそういう論調のことはほとんど出てきていません。「いまさら」ということはもちろんありますが、もし、内部統制に重要な不備のある上場企業を証券市場から退場させようということではなく、内部統制を是正していくことが制度の趣旨であるならば、何もことを急ぐ必要はない。上場会社が安心して重要な欠陥を開示して、かつ適切に対応できる環境を整備した上で導入しても遅くないのではないか。

考えすぎ、心配しすぎかもしれませんが、最近の株価の状況を見ていると、やはり、心配になります。果たして誰か声を上げるのでしょうか?

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2008年9月25日 (木)

J-SOXは茶番か

あちらこちらでJ-SOXの対応状況等に関するアンケート調査の結果が公表され、意外と対応が遅れている上場会社が多いなという感覚をお持ちの方も少なくないのではないかと思います。

それはともかく、具体的に作業を進めていくと、どうしても「茶番」になりがちな場面に遭遇することになります。実態が全く伴っていないのに、形式ばかり整えさせられる。内部統制の不備を是正することより、3点セットの書き方を直す方が優先させられる。そんな、どう考えても本末転倒なことに納得できない、という方もいらっしゃるでしょう。

例えば、数人しか社員がおらず、経理も会計事務所任せ、チェックは監査人任せの子会社の中で、決算財務報告プロセスに係る内部統制を整備しろといわれても、経理知識が全くない人が財務諸表を形式的にチェックするという程度が精一杯で、事実上、監査人の監査に頼らざるを得ないにもかかわらず、それでは内部統制の不備といわれる。では、経理の専門家を高い給料で雇わなくてはならないのか。せいぜい、親会社が子会社の業務委託先や監査人に親会社の方針を伝えて、それに基づいて経理処理なり監査をしてもらうということくらいしか出来ません。

こういう実態は、どこにでもあるにもかかわらず、金融庁は、この問題には触れようとしない。せいぜい業務分掌の問題までです。つまり、解決不能な「内部統制の不備」が厳然と存在するということに目をつぶって建前で処理するしかないということです。

さらに、決算財務報告プロセスの内部統制の評価というのも、極めて形式的になりがちです。経理実務がよくわからない内部監査部門の「シロウト」さんが、実質的に内部統制が有効に機能しているかをチェックしようと思っても、なかなか難しいでしょう。経理部門がチェックリストを作ったりしてお膳立てをして、それを内部監査部門が形式的にこなす。承認印の有無はチェックできても、その中身が本当にきちっとしているのかどうか、つまり実質的に統制が効いているのかどうかを確かめることがなかなかできません。繰延税金資産の回収可能性の判断をきちっと見ているか、などということは結果から判断するしかありませんが、単純な計算チェックや元データとの照合程度ならできても、判断に係ることが内部監査部門にそう簡単にできるとは思えません。これも実質的には監査人がチェックするしか方法がない。

決算財務報告プロセスだけでなく、IT統制についても、IT部門がお膳立てしたチェックリストなどで形式的にチェックすることはできても、内部監査部門が実質的に統制が効いているかどうかを検証することはなかなか難しい。あくまでも表面的なチェックにとどまらざるを得ない。こんなことで、内部統制のレベルを向上させることができるのか。形式的な「評価」自体が自己目的化してしまい、本来の目的である財務報告の信頼性向上に寄与しないのではないか。

J-SOXがすべて茶番とは言わない。実質的に役立つ部分もたくさんある。しかし、目的からして最も重要な決算財務報告プロセスの評価が「茶番」ということになると、果たしてここまで手間をかけてやるほどのことなのだろうか、という気もしないではありません。

J-SOXは、ダイレクトレポーティングを採用しないということをメリットの一つとしていますが、逆にそれが、「内部統制評価」に対する監査人の要求を厳しくし、茶番をよりいっそう本末転倒なものにしてしまってはいないか。

本末転倒なことについては、どしどし声を出していただきたい。大事なことは、適正な財務報告を作成し、投資家に提供することであって、3点セットを監査人の主義に合わせて理論的に完璧に美しく作ることではない。

金融庁もたびたびそういうことをいっているのにもかかわらず、個々の監査人に届かないのはなぜか。Q&Aなどを出しっぱなしにするのではなく、監査法人とよくディスカッションすべきだ。昔は、監査人は、不適正意見を出すことが目的で監査をしているのではなく、正しい財務諸表を作成させ、適正意見を出すために監査をしているのだといわれていました。しかし、正しい財務諸表を作成させるために指導性を発揮せず、批判性ばかり発揮していると、結局、不適正意見や意見不表明ばかりが連発されることになり、投資家のためにはならない。投資家は不適正意見がほしいのではなく、適正な財務諸表を必要としているのです。内部統制監査については、適正な財務諸表の作成が可能となる内部統制が構築されていることを求めるのであって、3点セットの作り方が悪いといって不適正意見を出すことを求めているわけではありません。

景気後退期にあって、上場会社も茶番に金をかけている余裕はなくなってくるはずです。コストをかけられないからこそ、本来の目的が達成されるように大事に金をかけるべきです。

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2008年9月13日 (土)

内部統制監査への期待と懸念

本番年度に入ってしばらく静かだったJ-SOX関係。ここのところアンケート結果が公表されたりして、再び話題が出てきました。文書化の遅れとか、全社的統制整備の遅れとか、相変わらずIT統制に係るツールの導入とか・・・。

しかし、私が業界人として一番心配なのは、内部統制監査が実質的にちゃんとできるのかどうか、監査人、特に若手会計士に内部統制の不備を見抜く力があるのか、及び内部統制の不備を会社自身に改善させる道しるべ的に役割を果たすことができるのか(監査人の指導性)ということです。

形式的な規程の有無や更新状態だとか、3点セットの書き方だとか、そういうところばかり指摘し、重要な財務報告の虚偽記載リスクに関係する内部統制の不備を見逃すことはないだろうか?3点セットだけ見ると良好そうに見えるが、いざ現場に行って実態を調べてみたら全く形式的で実効性がなかったにもかかわらず、それを見逃すことはないだろうか?

業界内でも古株会計士が気にしているのが、「最近の監査は、部屋の中でPCに向かうばかりで現場に行かない、現場の人に質問しない」ということです。実施基準やJICPAの監査実務指針でもウォークスルーとか視察とか質問とか再実施とかそういった監査手続が求められていますが(例示ではありますが)、そういうことをあまりやらずに3点セットの閲覧と監査の部屋の中で資料を持ってきてもらってできる運用評価手続だけで済ませてしまう。現場に行かずに質問しなくていいように、3点セットにより詳細な記述を求める。だから、形式的なことばかり言われて本当に問題になりそうな指摘はしてくれないし、内部統制を改善しようとしている上場会社にとってもあまり監査を受けているメリットが感じられない。なにせ時間がないというのが最大の原因で、監査人もとても気の毒なのではありますが。

それと、RCMやフローチャートを見て「不備」を見つけたとしても、それによって実際に誤謬や不正が生じているわけではないと上場会社が認識しており、特に手をつけたくないというところについて、監査的手法で本気で調べたら実はガタガタボロボロ、間違いだらけだったということになると、会社も手をつけざるを得なくなる。こういうことが監査現場でちゃんと出てきているか。遠山の金さんではないですが、動かぬ証拠を突きつけることで、会社も対応せざるを得なくなる。これがすばやくできることが監査人といおうか公認会計士の能力といっても過言ではないと思います。様々な監査上の経験から、不正や誤謬が生じやすいところをとっさに見抜き、そこを集中的に、しかも深く突っ込んで不正や誤謬を見つけ出す。そしてさらに大事なのは、原因を徹底的に調べて具体的な改善策が講じられるようなレベルに持っていくこと。原因調査が甘いとリスクに対処する適切な統制が構築できない。その手本を示せるのは、経験豊富な監査人。もちろん、不正や誤謬を発見すること自体が目的なのではなく、内部統制の不備によって実際に問題が生じているので改善する必要があるという監査人の主張に説得力を持たせることが目的ではありますが。ですからすべての不正や誤謬を洗い出す必要はない。

それと、統計的サンプリングの誤った適用によって、リスクの高いところの運用の不備がが見逃されてしまうのではないかという懸念もあります。昔の監査は、異常点だとかリスクの高いところを狙い撃ちしてサンプリングしていましたが、特にJ-SOXの運用テストでは実施基準の影響もあって機械的な統計的サンプリング中心になりがち。監査人もそれに近い。本来の統計学的考え方や監査マニュアルの考え方から言えば、すべてを一律に統計的サンプリングで行うのではなく、異常点だとか危なそうなところについてある程度集中的に見た上で、残りの部分について統計的サンプリングを実施するというような考え方だったのではないかと思います。たとえば、帳簿上のたな卸資産残高がマイナスになっているケースでは、その原因を確かめれば、多くの場合何らかの内部統制上の不備が見つかるはずです。整備状況レベルのものもあれば運用状況のものもあるでしょう。整備状況レベルで不備であれば運用評価にはいきませんので、統計的サンプリングの話は出てこないのですが、運用の不備が発見された場合に、不備があった統制についてそこから先統計的サンプリングを実施するのかどうか判断に困るところです。それがたまたまなのか、そもそもちゃんとやっていないからなのか、ということをどうやって判断するかです。そういうところにも監査人の知見というのは役立つはずです。社内の内部監査人(評価担当)が運用の不備を見つけて泥沼に陥ってしまうところを、監査人がうまく切りわけをして、迅速かつ的確に結論を出してみて、その手法なり判断の仕方を内部監査人が学び、次回から社内できちっと判断ができるようになる。

そんな指導的役割を監査人が果たすことができるのか。監査人なり個々の公認会計士の力量が問われるところです。

正直、監査現場はとっくの昔に限界を超えてしまい、内部統制なんかまともに見ている暇がないので期待されても困る、という声もあれば、仮に内部統制の不備を発見したとしても、それを指摘すれば上場会社から「具体的な改善策」を求められ、独立性の観点や監査契約範囲内での監査人の責任をできるだけ限定したい(余計なリスクを抱えたくない)という保守的な姿勢から内部統制の不備の指摘に消極的な監査人が増えてきているという声も聞きます。そうしているうちに、会計士の内部統制に関する能力(現場を見て実質を判断する力)もどんどん落ちてしまい、今度は内部統制監査における形式的なチェックや指摘に走ってしまうという状況になりかねないという懸念を持っています。そうならないよう、特に若手会計士には、少しでも機会があればPCからはなれて現場に赴いて、内部統制の実態をよく見て学んでいただきたいと思います。

また、内部統制コンサルといわれる人たちも、単なる3点セット作成代行で終わることなく、より現場の実態に密着し、理屈だけでなく不備により実際に問題が生じている証拠をつかみ、本当に問題があるところとないところ、リスクの高いところと低いところを見極めて改善のアドバイスをしていただければと思います。財務報告に係る内部統制の不備は、よくよく調べると経営的にも問題になるケースが少なくないです。J-SOXコンサルを契機として、より深い経営コンサルが行われ、企業の成長に結びついてくれれば、会社にとってもJ-SOXの支出はムダではなかった、ということになると思います。

監査を離れて数年になりますが、「えっ?こんな基本的なことも監査人は見てないの?」「こんなに問題があるのに監査人に指摘されていないの?」と驚いて心配になることがある反面、最近、監査って実はすごいんだ、本気でやればまじめな会社の役に立つんだ、ということを改めて感じて魅力的な仕事にも思えている次第です(じっくり監査をする時間さえあればですが・・・)。

果たして内部統制監査が監査現場の内部統制を見る力の向上に役立つのかどうか。。。

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