バッハ愛用「カロフ聖書」にちょっとだけ興味のある方へ
最近、バッハ研究家や演奏家の間で注目されているのが、バッハが愛用した「カロフ聖書」のファクシミリの発売だ。なんと、100万円もする。詳しくは、以下のWebsiteを参照してもらいたいが、とてもじゃないけど買えないし、買ったところでひげ文字のドイツ語にバッハ自筆のドイツ語コメントだから、解読不能。
Bach’s own Bible
http://www.kyobunkwan.co.jp/bach-bible/
簡単に言えば、ルターのドイツ語訳聖書にカロフという神学者がルター自身の著作からの引用を交えて逐条解釈した聖書の解説本。そこにバッハが書き込みやらアンダーラインやらをつけており、バッハの聖書解釈やカンタータなどを作曲する際のアイデアの素がそこに発見できるということで、重要な文献となっている。このブログでもよく引用しているようなルターの著作も数多く引用されているので、当然ながら、ルターの考え方を反映していると思われる。
ルターもそうであるが、カロフも特に詩編においては音楽と絡めた記述が少なからずみられる。そういうところがバッハのお気に入りの一つの理由だったのかもしれない。
さて、買えないし読めない私のようなものがカロフ聖書にお手軽に接するためにはどうしたらいいか、いろいろ探してみたら、あった!しかも英語でたった2,000円!日本のAmazon.co.jpでも買える。
J.S. Bach and Scripture: Glosses from the Calov Bible Commentary
Robin A. Leaver著
https://www.amazon.co.jp/J-S-Bach-Scripture-Glosses-Commentary/dp/0570013291
これは、バッハの書き込みの一覧とその箇所の写真、英訳及び解説がまとめられたもの。バッハの書き込みだけでなく、カロフやルターが書いた部分についても英訳されているので、どのような記述に対してどのようなコメントが付されているかが英語で読むことができる。これなら辞書片手に何とかなる。バッハ愛好家がカロフ聖書について知る程度ならこれで十分かもしれない。もちろん、カロフ聖書の全訳が出ればそれに越したことはないが。。。
一部だけご紹介するとこんな感じである。
このページでは左側にこの本の作者の解説や英訳がついている。
ちなみにRobin A. Leaver氏は、富田庸氏らと共にこんな本も書いている。
Exploring Bach's B-minor Mass
https://www.amazon.co.jp/Exploring-Bachs-B-minor-Mass-Tomita/dp/1107007909/ref=sr_1_6?s=english-books&ie=UTF8&qid=1477141147&sr=1-6
ところで、カロフ聖書全体の雰囲気を知りたければ、実はバッハの書き込みがないカロフ聖書のファクシミリ版をネット上で無料で入手することができる。
Universitäts- und Landesbibliothek (ULB)
http://bibliothek.uni-halle.de/
ここで「Calov Luther」で検索すると、ルター関係のカロフの著作がざーっと出てくる。
Die Kleinen Propheten Nach der Deutschen Dolmetschung S. D. Martini Lutheri,
または
Die Heilige Bibel
ではじまるもので、スマホのマークみたいなのがついているのが、PDFでダウンロードできるもの。
残念ながら、バッハが数多くの書き込みをした旧約聖書の創世記、出エジプト記、レビ記、詩編それに新約聖書はないが、他の旧約聖書(預言書)は見ることができる。
バッハのマニアックな世界にちょっと足を踏み入れてみたいという方には、ぜひおすすめである。
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コメント
カロフ聖書英語版を早速発注しました。情報を有難うございます。富田庸先生は、私が編集したイコール式バッハ平均律クラヴィーア曲集を「世界で初めての業績」と言われまして激励のメールを私のブログに送ってくださいました。以来、何かにつけご相談させていただいております。
投稿: bach | 2016/10/28 10:06
カロフ聖書の解説書をさっそく発注されたそうで、早くお手元に届くといいですね。とはいえ、海外からなので、数週間は見ておいた方がいいですが。それだけ待って手にした時の喜びはまた格別です!
投稿: AH | 2016/10/30 20:18