ロ短調ミサ曲(3) ~脱線、BWV55とペテロの否認~
少々脱線。
マタイ受難曲の"Erbarme dich"について調べていたのだが、これって、BWV55「Ich armer Mensch,ich Sundenknecht」の第3曲~第6曲と全く同じ内容なんだ、と今更ながら気がついた。第4曲のアリアは「Erbarme dich!」で始まるし、しかも、第6曲のコラールは、マタイ受難曲のあのコラールと同じ曲、同じ歌詞。さらに、第5曲のレチタティーヴォの解説付き。
もっと言えば、BWV55全体が「ペテロの否認」の解説のようなもの。実際に話を重ね合わせると、三度「この男を知らない」といったペテロは、まさに「哀れなる人、罪の下僕」。神に対する不義を働き、神に背いた。そして神は激しく怒り罰しようとした。そこでペテロは「憐れみたまえ」と神に祈る。涙を流して悔い改める。そこに、イエス・キリストが受難により罪を贖った。このことによって、神は再びペテロを恵みのもとに受け入れた。そしてあのマタイと同じコラールがくる。
とても地味なカンタータだが、罪、神の怒り、悔い改め、憐みの嘆願、贖罪、罪の赦し、恵み・救い、と、とても大事な要素が含まれている。細かいこと、神学論的に厳密なことはよくわからないが、イエス・キリストが十字架につけられたことの意味がここに表されているような気がする。いわゆる「十字架の神学」の中心的テーマにもかかわるカンタータと言えるかもしれない。
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