OLCのメンデルスゾーン
オーケストラ・リベラ・クラシカが、ベートーヴェン「英雄」からいきなりメンデルスゾーンまで飛んでしまった。1820年ころ、12~13才位の時期の作品である、弦楽シンフォニアの中から6曲が演奏された。1820年ころといえば、ベートーヴェンの交響曲第8番が作曲されてからすでに6年ほどたっている。そのくらい「新しい」曲。今年は、BCJもメンデルスゾーンを演奏するらしいし、どんどん18世紀から離れていく寂しさを感じているが、実際にこの曲を聴いていると、そんな寂しさは遠くに吹き飛んでしまう。
たった12年の人生で、18世紀のすべての様式を身につけてしまい、それを19世紀の新しい感覚で再構成したような作品、としかいいようがない。バッハ、ヘンデル、ハイドン、モーツァルト、さらにフランスの作曲家たち、そして19世紀の扉を開いたベートーヴェン・・・。と、いろいろな作曲家の様式や音が聞こえてくる。なかでも、C.Ph.E.Bachの影響は非常に大きい。C.Ph.E.Bachは「大バッハの息子」扱いをされることが多いが、古典派からメンデルスゾーンの時代の作曲家にとっては、父に引けを取らないかそれ以上の影響を与えた重要な存在であるということを改めて認識させられた。驚いたのは、なんと100年以上前に流行ったフランス序曲の様式まで取り入れていること。CDもない時代、実際にはもう演奏されなくなったであろうそんな昔の様式をどうやって身に着けたのか実に不思議である。実際の演奏を聴くことではなく、楽譜から身につけたのであろうか???
そんなこの曲集を演奏するためには、演奏家の側にも18世紀の様式についての理解が必要になるであろうことは疑う余地がない(といいきってもよい)。この日の演奏を聴いていると、さまざまな様式、そして先人たちの有名な作品が聞こえてくる。しかし、仕上げが違う。
古楽器の弦楽器の響きの美しさというのは当然あるのであるが、それだけではなく、18世紀の音楽の持つ「よい趣味」があり、単なる美しさを超えて、そこに人間ドラマがあったり、と盛りだくさんなのである。ロマン派的な美しさだけでは到底説明できない価値がそこにはあるのである。不協和音の醜さ、ガット弦の雑音、そんなものもすべて音楽なのである。
対位法の処理もさすがである。単なる4つの旋律線ではなく、4つの線が作り出す「響き」を聞かせてくれるのがうれしい。
とにかく、18世紀族にとっては楽しめる作品群であり、OLCの良さが存分に生かされるプログラムなのである。
そういえば、久々に森田芳子さんヴィオラの音を聞いたが、海外に演奏拠点を移す前とはかなり感じが変わったような気がして、とても印象深かった。きっと素晴らしい音楽活動をしていらっしゃるのだろう。
楽しい演奏会だった。。。
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