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2011/02/28

ピリオド奏法の呪縛

いま、ブリュッヘンのロ短調ミサ新盤を聞きながら書いています。

これって、ライブ録音なんですね。聴いていると、ライブらしく傷もなきにしもあらずですが、その方がかえって比較できてよいかと。

ホルンは、トランペットのようなホルンではなく、古楽オケで一般に行われているようなホルンでした。その後、何か最新の研究の成果でもあったのでしょうか?

うかつにも、いままでこのCDを聞いたことがなかったのですが、想像していたのとそんなに変わらなかった。「18世紀オケだったら・・・」というのとそんなにかけ離れていませんでした。往年のメンバーが去ったフルートとオーボエを除いては。旧盤との比較で、古楽器らしいくせがなくなったみたいなことを書いている評論もありますが、本質的な古楽器らしさは何一つ失われていない。このオケメンバーのうちの何人かはBCJにも客演していたり、以前に聞いていたりしているということもあるのですが。山縣さんや森田芳子さんもいますし。

ということで、26日の演奏と改めて比較しても、実際に聞いたときの印象とほとんど変わらなかった。

まず、Cum Sancto Spiritu。特にフーガ合唱に入ったあと。フーガのテーマの歌い方(特にgloria)が器楽と合っていなくておかしいと思ったのですが、CDを聞くと、器楽がやっているように歌っていました(古楽器の演奏ではごく普通の解釈ですが)。

Credoの冒頭、通奏低音は一見漫然と刻んでいるように聞こえますが、さすがに細かいことやっていて雄弁です。次の合唱のティンパニもまたしかり。さすがマルテン。

Confiteorのような曲をどう歌わせればよいのか、私のような歌のシロウトにはよくわかりませんが、各パートが能動的に歌ってないと訳わからなくなってしまうのでしょうね。と改めて納得。

Ossanaはやはり3拍子がしっかり出ている。

やはり、古楽器演奏の常識はすべて踏まえた演奏になっている(当たり前ですが)。

そしてなにより、楽器をたっぷり鳴らしていて、一つひとつの音に勢いがある。リズムやビートも明確。だから生き生きしている。ある意味とても自由闊達な演奏。楽器の音色の魅力もありますが、私にとっては、何よりこの生き生き感が古楽器演奏の魅力です。

さて、世の中で言うところの「ピリオド奏法」というのは、例えば弦楽器で言えば張りの弱いバロックボウを使って楽器を鳴らしきれず、また、大きな音が出ないように抑制する。細かいことにこだわるあまり、小ぢんまりとした演奏になってしまう。古楽器ならごく自然にできることをモダン楽器でやろうとすると、色々なところに無理が生じる。ベテランの古楽器奏者であれば何も考えなくてもごく自然にやっていることが、あらかじめ細かいことまで考えてこうと決めておかないとできない。だから音楽に余裕がない。そして、古楽器奏者はその背景まで理解して演奏するが、「ピリオド奏法」はそこまでいっているのか。例えば、バッハにおいて、各楽器の果たすべき役割を理解しているか。特にトランペットのような象徴的な楽器においては。歌詞にどのように合わせて弾けばよいか・・・。楽譜の読み方がずいぶん違う。

古楽器の演奏と「ピリオド奏法」の違いは、特に宗教音楽のような場合には、より明確になるような気がします。

「ピリオド奏法」自体が目的になってしまい、その先にある音楽にまで辿り着かないと、「ピリオド奏法」の呪縛にとらわれてしまうことになりかねません。「ピリオド奏法」をバロック時代の演奏規則にがんじがらめにされるというイメージで演奏するか、それとも、生き生きとした表現を手に入れるための多彩な表現手法ととらえるかでずいぶん違ってくると思います。もちろん、後者であるべきですが、そのためには、「ピリオド奏法」のテクニカルな習得と共に、その背後にあるものも理解する必要があると思います。「ピリオド奏法」であることを意識せずに余裕をもって自由に表現することができれば、その時こそ本当の意味での「ピリオド奏法」といえるのではないでしょうか。

今回のベートーヴェンもそうですが、古典派はかなりいい線行っているような気がします。やはり、経験が一番なのでしょうね。それと比べるとバッハは圧倒的に経験が少ないというのもあるのかもしれません。

モダン楽器の良さを殺さずに、規則に縛られずに生き生きとした表現ができるようにするためにはどうすればよいのか、特にバロックにおいてはまだまだ課題がありそうです。

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