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2008/04/20

ピリオド奏法について考える(8)スコダの著作に学ぶ

「ノンヴィブラート」ばかりの薄っぺらい「ピリオド奏法」議論をしている演奏家、音楽ファンたちに是非おススメしたい本があります。

パウル・バドゥーラ=スコダ著

「バッハ 演奏法と解釈 ピアニストのためのバッハ」

今井顕監訳、松村洋一郎、堀朋平訳 全音楽譜出版社

ピアニストが現代ピアノを使ってバッハを演奏する際の手引きであり、ピアノにおけるいわゆるピリオド奏法についてのかなり詳細な解説書です。帯には「もっと自由な、バッハへ。規則や常識、多くの狭量な思い込みから解き放たれ、バッハの本質に迫る待望の一冊」とあります。

ピリオド奏法といえば、規則にがんじがらめ、「やってはいけない」ことや「やらなければならない」ことだらけで演奏が不自由になる、とおもっている方も少なからずいらっしゃるとは思います。19世紀終りから20世紀前半の巨匠たちが好き勝手に演奏していた時代の反動で、今度は非常に禁欲的で教条的で生き生きしていないバッハ演奏が主流になる。しかし、古楽器の演奏というのは、20世紀前半の伝統(例えば、すべての音は均等均質に)から解放されて、当時の文献が教えてくれる様々な可能性を演奏に生かすという面があります。

この本で書かれていることでいくつか気になる点を挙げれば

・現代ピアノで弾いてもよいし、ペダルを使うこともかまわない

・楽器云々より、当時の演奏習慣、演奏様式の方が大事

・とはいえ、本に書かれている当時の演奏習慣、様式というのがかなりバラバラで、様々な解釈の余地を残している

といったところでしょうか。いずれも「わが意を得たり」といったところです。

特に注目していただきたいのが、「第4章 バッハのアーティキュレーション」です。ここが従来の現代楽器の演奏と古楽器またはピリオド奏法の一番大きな違いだと思います。

本を読んでいると、随所に著者のぼやきが出てきます。例えば、国際コンクールでバッハを弾くような人でも、サラバンドが舞曲であることすら知らない。。とか、和声的に見て明らかにおかしな装飾音の弾き方をするとか。1985年ころですらそんな状況だったようです。

バッハといえば、ポリフォニー、対位法というイメージが強く、和声に関してはあまり注目されないようですが、カンタータのコラール編曲を聴いただけでも、バッハほど様々な和音を駆使した作曲家はいないのではないか、と思えるほどですし、「通奏低音」の存在を考えれば、和声というのはバロック時代においても非常に重要であり、もっと注目すべきなのですが。有名な平均律クラヴィーア第1巻第1番のプレリュードとか無伴奏チェロ組曲第1番のプレリュードなどは、分散和音だけで曲を作っていますが、和声の変化だけで感動。

ピリオド奏法についてあまりなじみがない方にとっては、まさに「目からうろこ」の連続かと思います。8000円近くの大変高い本ですが、興味のある方には是非おススメします。

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