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2008/03/10

ピリオド奏法について考える(7)~装飾音

最近、現代コンディションのヴァイオリンでバッハを弾いています。いわゆる「ピリオド奏法」の練習です。バロックコンディションの楽器を弾いている場合には「ピリオド奏法」とは言わないので、私としては久々の「ピリオド奏法」の実践ですが、なかなか難しいですね。バロックボウでは簡単にできることがなかなかできない。しかし、楽譜の読み方は楽器が変わってもまったく同じです。その楽譜の読み方で特徴的なものの一つが、「装飾」の取り扱いです。

20世紀の半ば頃までは、「バッハの音楽は完璧なのだから、楽譜に書いてあること以外何も付け加えてはならない」などといわれることもあったようですが、今ではそんなことはありません。特に古楽器による演奏では。装飾というより、即興といった方がいいかもしれません。

装飾に「イタリア式」と「フランス式」があるというのは、業界ではイロハのイですが、その両方ともバッハにも適用できます。念のために説明しておくと、フランス式は、トリルとか前打音だとかそういう普通に見られる「装飾音」。これに対してイタリア式は4分音符だけの単純な旋律を16分音符などの旋律に即興的に変えるような装飾。バッハは、この両方を駆使して、しかも楽譜にことこまかく書き込んでいるという点で、同時代の作曲家とはかなり趣が違います。ということは、バッハの楽譜をこと細かく見ていけば、バッハが用いたフランス式、及びイタリア式の装飾を体験することができます。

例えば、バッハは生涯に何度も楽譜を書き換えたり、別の曲に編曲(パロディ)したりということが頻繁にありますが、多くの場合、後に書いた版には装飾がことこまかく書き加えられることが多い。特に、オルガン曲やその他の楽器の曲からチェンバロ曲に編曲されている場合にイタリア式装飾を書き加えているケースが少なからず見られます。チェンバロ協奏曲は比較的後のほうに書かれていますが、元の曲に比べてかなり飾られています。これは、チェンバロが音を長く伸ばせないということもあるのかもしれませんが。

では、装飾が書かれていない場合に装飾を演奏家自身が加えてはいけないのか。または、後のパロディを参考に装飾をつけてはいけないのか。それはあくまで個々の演奏家にゆだねられるべきだということのようです。鈴木雅明さんは、カンタータのシンフォニアでオルガンソロを弾く際にはかなりの装飾を即興的に入れています。後にチェンバロ協奏曲になる曲については、チェンバロ版とは異なる独自の装飾を施しています。

もちろん、和声を始め当時の流儀、演奏習慣というものをきちっと踏まえていなければなりません。また、オーケストラの各奏者が勝手に一人だけ装飾を入れるようなことも許されません。

フランス式装飾に関して言えば、同じ記号を使っていても、国や時代、さらに作曲家によって記号の意味が異なる。また、例えば前打音についていえば、短い前打音と長い前打音がある。最近、古典派の演奏では短い装飾音が多く使われているような気がしますが、果たしてどうするのが正しいのでしょう?

ところで、いまさらなのですが、バロック音楽でも「ピリオド奏法」が行われているのか。我が国では現代楽器のオーケストラが古典派の演奏をする際に「ピリオド奏法」というケースが多いような気がします。

いずれにせよ、現代楽器でバッハをはじめとするバロック音楽を演奏する際にも装飾の問題は避けて通れないのではないかと思います。

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