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2008/02/26

【感動した人は読まないで!】オランダ・バッハ協会のヨハネ

※この演奏に感動した人はどうぞ読まないでください。私のグチで気分を悪くしてもいけないので

果たしてこれについて書くべきか迷いましたが、尊敬してやまないゲルト・テュルクが福音史家を歌ったし、気分的にすっきりしたいので書きます。

今晩は、紀尾井ホールにオランダバッハ協会のバッハ ヨハネ受難曲を聴きに行きました。福音史家は日本でもBCJですっかりおなじみのゲルト・テュルク、イエスにはこれまたたびたび来日のステファン・マクラウド、さらにカウンターテナーにマシュー・ホワイトと、この名前だけ見ても期待せずにはいられない。果たして彼らが指揮者がかわってどう変わるのかということも含め、とても楽しみでした。

記憶違いでなければ、以前アムステルダムに出張にいったときに、コンセルトヘボウで彼らの演奏を聴いたような気がします。また、マタイのCDも持っています。

そんな感じなのですが、今日はまともな感想が書けるかどうか全く自信がありません。というのも、座った席(1階左側バルコニー)のせいか、肝心の合唱のバランスなりハーモニーがとても聴きづらかった。もっといえば、実際に歌っているところ、弾いているところとは全然違う方向から音が聞こえてきて、それが聴いた場所においては全体のバランスを大いに崩してしまっていた、時にはステージから聞こえてくる音よりも大きいようにすら感じられたからです。Vnも聴きづらかった。最初は、壁にはねかえってくるのかなと思いましたが、どうもそうでもなさそう。上を見るとそこにはスピーカーが。まさか、とは思いましたが、ひょっとしたらPAを使っていて、スピーカーから音が出ているのでは、と思ってしまいました。そうしたらそれが気になってなかなか演奏に集中できず。左耳をふさいで何とかそちらの方角からの音を遮断しようと試みるも、片耳ではどうもうまくない。一応生演奏は数えられないほど聴いてきているのではありますが、あれほど編成と配置にこだわっている演奏家と、予鈴も鳴らさず注意のアナウンスもしないほどのこだわりの音楽事務所の組み合わせで果たしてそんなことがあるのか、という気もして、全く自信がありません。

それはともかく、演奏の方は、たぶん、すばらしい演奏だったのだと思います。「宗教音楽」というよりは「劇」を意識した演奏だったかと思います。時折、ソロ歌手同士が向かい合って会話をしているように歌っているような光景も見られましたし、概してソロの表現が劇的。といおうか、表現が「濃い」。人数が少ないこともあり、教会で大人数で演奏するというよりは、村の小さな場所で「受難劇」を上演している雰囲気。特に、バスのヴォルフ・マティアス・フリードリヒが歌もその顔の表情も超濃くてテンション高い。正直、最初は表現力のある歌手だと思って感心して聴いていましたが、そのうち、福音史家やイエスまで食ってしまいそうな勢いで、しかもペテロでもピラトでも同じテンションなので、ちょっとKYな感じもしてきました。

福音史家やイエスは、例によって端正。マクラウドは相変わらず若々しくみずみずしく清らかな声。汚れを知らない「原罪」を持たないイエスというイメージにはふさわしいのですが。

ゲルト・テュルクの福音史家は、いままでマタイもヨハネも何度も生で聞いてきましたが、正直この日は、BCJで聴く彼とはちょっと違う感じがしました。とても冷静で考え抜いて歌っている、もちろん歌(語り)としてはすばらしい。でも、BCJで聴かれるようなペテロの否認のところで「すすり泣く」感じ、そして、歌いながら感極まり、目頭が熱くなっているような雰囲気。「表現」を超越した何かがある。というのとはちょっと違う

というように、全体的に「劇」としての「演出」を感じた演奏でした。演奏家たちも、そうした指揮者の演出に忠実に従って、プロとしてきちっといい仕事をやった。そんな感じの演奏のように思われました。BCJとは違うタイプですが、バッハの受難曲が本質的に持つ性格を見事に浮かび上がらせ、われわれに今までとは違うヨハネの魅力を教えてくれた演奏だったと思います。

合唱に関して言えば、ソリストにリピエノが1人ずつ補助でつくという編成でしたが、とてもソロ的な表現、合唱というよりも、ソリストのアンサンブルという性格の演奏でした。リピエノの人達もソロが十分務まりそうなほどにうまくて、本当にすばらしいアンサンブル。コラールの表現は考え抜かれていて見事です。ただ、群衆のようなところは逆にうますぎてストレートな群衆の感情が伝わりにくいというところもあったような気がします。このような編成は、恐らく歴史的には十分説得力があるのではないかと思いますが、同じような考え方で、もう一人ずつリピエノが多いBCJの合唱の作り方とはちょっと違うのかな。それと、各パート2人というのがとても難しい。2人の声の質とか声量のバランスが悪いと何ともまとまりがなくなってしまう。私の席からは、特にソプラノは常に一人の声しか聞こえない。ソリストなのかリピエノなのかはわかりませんが。ソリストは合唱の時にはあまり大きな声で歌っているようにも見えなかったので、リピエノのような気はしますが。。今回はヨハネということで合唱を一つの大きな楽しみとしていたので、こういうところで合唱部分の面白みが満喫できなかったのは残念。

それといつもながらのグチですが、聴衆も肝心なところでせきやくしゃみ。「成し遂げられた」とか、もっとも緊迫する場面での雑音は興ざめです。せめて口にハンカチを当てるとか、ちょっとだけ我慢するとか、それだけでもずいぶん違うのに。

と、何となく不満タラタラのようにも見えますが、これも、演奏自体がどうのというよりも、ナゾの響きがすべての原因のような気がします。昔、BCJが紀尾井ホールで定演やっていた時もそうですが、どうもこのホールと私は相性最悪、鬼門のようです。特に歌ものは。純粋に演奏に集中できて、感動できた人達がとてもうらやましい。

いままで、ゲルトの福音史家を聞いて、涙もろい私の目頭が熱くならなかったのは、恐らく今日が初めてでしょう。本当にゲルトとバッハには申し訳ない気持ちでいっぱいです。

キャロリン・サンプソンが来日できるのかわかりませんが、もし彼女が来るなら財布には大変厳しいですが、3月2日のヨハネも行ってみようか。まだチラシ配っていたし。

結局、書いたけどすっきりしませんでした・・・。

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コメント

はじめまして。

私は土曜日に厚木で聴きました。
昨夜は行けませんでしたので、興味深く拝読させていただきました。
PAを使用していたとは、にわかには信じられませんが(厚木では使用していません)。

>キャロリン・サンプソンが来日できるのかわかりませんが、
>もし彼女が来るなら財布には大変厳しいですが、
>3月2日のヨハネも行ってみようか。まだチラシ配っていたし。
残念ながらキャロリンは来ないようです。


2008年3月2日[日]「エイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団《ヨハネ受難曲》」公演に出演予定のソリスト、キャロリン・サンプソン(ソプラノ)が、長距離の空路移動を避ける必要があるという医師の指示により来日できなくなりました。
代わって、本公演にはリディア・トイシャー(Lydia Teuscher)が出演いたします。
http://www.operacity.jp/topics.php?number=83

投稿: aoyama | 2008/02/26 13:07

aoyamaさんはじめまして。情報ありがとうございました。キャロリンはやはりダメなのですね。BCJでもキャンセルになったので心配だったのですが残念です。病気とかでなければよいのですが・・・。

一日たって、演奏を思い出してみると、頭の中で響きを補正すればやはりかなりいい演奏だったなと思います。合唱が畳み掛けるようなところでも、あえてゆっくり目のテンポで歌わせたり、同じ歌でも全く違った意味合いにすら聞こえるのだな、と思いました。

さて、私もPAだと確信しているわけでは全くないですし、確かにステージ上にマイクはたくさん立っていましたが、NHKが3月21日に放映するということで収録していたので、たぶん、PAではなく収録用だと思います。でも、最近ではステージの床にもマイクをいくつも置くんですね。床の響きも収録しようということなのでしょうか。このようなマイク、アントネッロのオルフェオの時にも見かけたような気が。どういうマイクなんでしょう?

それにしても「感動した人は読まないで!」とお願いしたのに、結構たくさんの人がアクセスして読んでしまったようです。感動しない人がこんなにいるとは絶対に思えないので、ちょっとやばいかななんて心配になります。間違いなくいい演奏でしたよ!

投稿: AH | 2008/02/27 00:13

はじめまして。pocknと申します。時々ブログにおじゃましています。僕もこの演奏会聴いていました。席は2階のセンターで音のバランスはとても良かったのですが、これはもしかしてPAのおかげ?(^^; 

それはともかく、僕はこの演奏にとても感動したクチです。「シャイなヴァイオリン弾きさん」のような古楽への専門知識も経験もないので、的外れな感想になっているかも知れませんがTBさせて頂きます。あ、でも貴ブログの内容は決して感動した人をヘコませるようなものではなく、いろいろと考えさせられ、また認識を新たにしてくれました。「成し遂げられた」でカマされた咳には同じく閉口しました!ではまたおじゃまします。

投稿: pockn | 2008/02/28 11:54

pocknさん ようこそ

TBされたサイトを読ませていただきましたが、相当感動されたご様子でよかったです。ゲルト・テュルクもマクラウドにしても、とてもすばらしいバッハ歌手です。こんな彼らをいつも生で聞ける私たちはとても幸せです。機会があれば、是非、バッハ・コレギウム・ジャパンで彼らの歌を聴いてみてください。

PAについては、たぶん私の思い過ごしでしょう。2階正面ならバランスもとてもよいと思います。あの配置というのは実によく考えられていて、理にかなっています。やはり正面で聴きたかったです。

投稿: AH | 2008/02/28 22:10

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» Ich will dich preisen ewiglich!/オランダ・バッハ協会のヨハネ受難曲 [極楽蜻蛉日乗]
 2008年2月23日(土) 16:00 厚木市文化会館・大ホール  J.S.バッハ/ヨハネ受難曲 BWV245  (ピーター・デュルクセンによる1724年初演ヴァージョン)  オランダ・バッハ協会合唱団&管弦楽団  ゲルト・テュルク(エヴァンゲリスト)  ステファン・マクロウド(イエス)  マリア・ケオナハ(ソプラノ)  マシュー・ホワイト(アルト)  アンドルー・トータス(テノール)  ヴォルフ・マティアス・フリードリッヒ(バス)  ヨス・ファン・フェルトホーヴェン(指... [続きを読む]

受信: 2008/02/26 13:08

» フェルトホーフェン指揮オランダ・バッハ協会合唱団&管弦楽団「ヨハネ受難曲」 [facciamo la musica!]
2月25日(月)フェルトホーフェン指揮オランダ・バッハ協会合唱団&管弦楽団 紀尾井ホール 【曲目】 バッハ/ヨハネ受難曲BWV245{/face_heart/}{/star/} 【演 奏】 T(福音史家):ゲルト・テュルク/B(イエス)ステファン・マクラウド/S:マリア・ケオハナ/A(カウンターテナー):マシュー・ホワイト/T:アンドルー・トータス/B(ピラト、ペトロ):ヴォルフ・マティアス・フリードリヒ ヨス・ファン・フェルトホーフェン指揮オランダ・バッハ協会合唱団&管弦楽団 いつも良い古楽... [続きを読む]

受信: 2008/02/28 11:56

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