圧巻、アントネッロの「オルフェオ」
まさに圧巻。
神奈川県立音楽堂で1/19,20に行われたアントネッロによるモンテヴェルディ「オルフェオ」。やはり古楽はこうじゃなきゃ。
これが果たして正統的な解釈なのかは私にはわかりませんが、そんなことはこの際どうでもいい。生き生きとして情感豊か。感情のときには激しく、ときには微妙に揺れ動く様を絶妙のタクトさばきで引き出す。そして自由自在な装飾。ものすごい集中力。そしてとてもモダンでポップなリズム感。同じ楽譜でも、打楽器がちょっとたたき方を変えるだけで、こんなにも感じが変わるものか。
歌手陣の充実振りもさることながら、やはり器楽陣が気になる。なんといってもすばらしかったのは、オルフェオである春日さんの竪琴。というのはウソで、西山まりえさんが実際には弾いていたハープ。そして激しい通奏低音イタリアンチェンバロとガンバ、テオルボ。西山さんは、通奏低音にも一段と磨きがかかり、アントネッロの通奏低音の要となっている。ときには髪の毛を振り乱し、激しく身体を動かす。しかし、それが大人の女の艶っぽさを感じさせる。数年前には全くなかったこと。ガンバの石川かおりさんの雰囲気ととても似てきたような気がする。もちろん、その石川さんのガンバもすばらしい。
リコーダーの古橋さん。濱田さんが指揮していることもあって、リコーダーは彼が一手に引き受けていましたが、これがまたうまくて激しくて・・・。ブルーザー・ブロディを彷彿とさせていました。
そして私的にはなんといってもやはり2人のVnの名手、小野萬里さん&戸田薫さんに拍手を送りたい。いくら絶賛してもしきれないほど。美しくほれぼれする音色、情感。ときには思いっきり泣かせます。あまりにも素敵すぎます。
そのほか、ブラス軍団+コルネットはさすが濱田さんの愛弟子集団だけあって磐石。冒頭のファンファーレはとてもよかった。
歌手では、オルフェオの春日さんがタイトルロールらしく、甘い声で存在感を見せつけていましたが、テノールの谷口さん、チェリー櫻田さん、カウンターテナーの弥勒さん、上杉さんもそれぞれに持ち味を発揮。弥勒さんは女性役でしたが、女性以上に歌も姿も色っぽかった。女声陣では、花井さんがすばらしかったです。
そして、古楽界の貴公子だと改めて思ったのが濱田さん。指揮者姿もあまりに絵になっています。こういう音楽をやらせれば、やはり彼は天才。もって生まれたものが違う。我々のハートをがっちりわしづかみにして離しません。
今回の公演は、オケをピットではなく舞台の上に乗せて、演奏する姿、指揮する姿がよく見えるようにしましたが、これは絵になる彼らだったこともあって、音楽的にも視覚的にも大成功。
ということで、とにかく楽しく、感動しまくり。繰り返しになりますが、古楽の魅力は、楽器とか演奏習慣の正しさ、正統性にあるのではなく、楽しさ、生き生きさにあると私は信じています。どんなに正しくても、生き生きとしていなければ意味がありません。そのことを証明し、まざまざと見せつけた。まさに圧巻の「オルフェオ」でありました。
アントネッロ万歳!ありがとう。
公園の裏舞台の写真が神奈川県立音楽堂のHPに掲載されています。
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