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2007/07/08

ハイドンからベートーヴェンへ OLCの旅

ついに、オーケストラ・リベラ・クラシカ(OLC)が、ベートーヴェンの扉を開けてしまった。開けてはいけない扉を開けてしまった・・・。

2007年7月6日19:00、大阪いずみホールでの出来事。

ベートーヴェンの交響曲第1番と第3番。

OLCといえば、中期までのハイドンとモーツァルトまでで、ベートーヴェンは夢のまた夢のはずだったのが・・・。

現に、1週間前の6月29日には浜離宮朝日ホールでハイドンのパリ交響曲集のうち2曲を演奏したばかり。

ベト1といえば、ブリュッヘンの18世紀オケの最初の録音でモーツァルトの40番とともにライブレコーディングされた曲。古楽器によるベートーヴェン演奏、そしてそこからベト1再評価がはじまる(私の中では)。ハイドンの延長上でとらえられる部分と、もはやそういう次元を超えてしまった部分がある。

そしてエロイカ。さんざん聞きなれたこの曲。年間に一体どれだけ演奏されるのだろう。しかし、あまりに手垢にまみれて「古典」と化してしまった。

OLCのベートーヴェンは、そんな「古典」「名曲」のイメージを完全に一新してしまった。いままで聞いたこともないような壮絶なアイデアがあるがままに表現される。そしてその展開の速さにとまどってしまう。不協和音がこれほど不快に響いたことがあるだろうか。それぞれの楽器がいかに多様な役割を多様な場面で与えられているか。こんなことをやっていたのか? 今まであまりに不快で斬新であるがゆえに重厚な響きのオブラートに包まれていた一つ一つの楽器の響きが、鮮やかに浮かび上がる。しかし、全体の響きとしては決して反発しあうことはなく、調和は取れている。意図された調和というよりは、それぞれの強烈な主張の結果として調和が取れている。

なぜ、ベートーヴェンが斬新なのか。エロイカの新しさは何なのか。まさに、初演時と同じような新鮮な驚き、衝撃を受けた。常識では考えられない。常人ではありえない。

そして、ベートーヴェンが対位法の相当な使い手であることも改めて感じられた。バッハ演奏などを通じてオーケストラにおける対位法の極意を知り尽くしているOLCメンバーだからこそ、透明な響きで一つ一つのパートをはっきりと、しかも他のパートを邪魔せずに聞かせることが出来る。

緊張と弛緩の対比。これもこの日の演奏の特徴といえよう。ただならぬ緊張とそれをいきなり緩めてしまうその切り替えの見事さ。

そして、演奏家の集中力といおうか気合、そしてノリノリの雰囲気がすばらしかった。

やはり、鈴木秀美はベートーヴェンが好きだったのだ!あれだけすばらしいチェロソナタの演奏がある。当然といえば当然だが、それにしても、初めてベートーヴェンの棒を振ったとは思えないほど何かはまっていたし、神がかっていたともいえる。

いずみホールは、この日の演奏に、これ以上はないという音響空間を提供してくれた。これ以上大きくても小さくてもこのような響きにはならなかった。BCJのマタイとともに、新たな歴史を切り開く記念すべき場になったといえよう。

さて、この日の演奏会は、いずみホールのベートーヴェン交響曲全曲演奏シリーズの初回にあたり、これから毎回異なるオーケストラが登場するが、古楽器はこの日のみ。このような衝撃的なベートーヴェンを聞いた聴衆は、果たして次回以降の演奏をどのように聴くのであろうか。

そして、この歴史的演奏を聞くことが出来なかった東京の古楽ファン、OLCファンは、もう聞くことが出来ないのか・・・。

残念ながら、東京にはいずみホールクラスのホールがない。

幻で終わらせてはならない。26日は、ハイドンであれほどいい演奏をしたにもかかわらず、客席には昨年と比べて空席が目立っていた。関係者の方々には集客にも気を配っていただきたい。そして、何とかベートーヴェンにたどり着くよう、祈っていきたい。

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ポスター

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隣の大阪城公園から見える大阪城天守閣

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開場前のひととき。

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開場後、聴衆が入場する。ほぼ満員。

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コメント

オーケストラ・リベラ・クラシカ、聞いたことないのですが、そのエロイカの前衛性、斬新さを十分に感じさせる演奏とのこと。ちょうど、今日、ハインリヒ・シフの演奏を聴いて、同じことを感じました。TBさせていただきましたので、よろしくお願いいたします。
本当に、東京でもやってほしいです。

投稿: 亭主 | 2007/07/27 00:45

亭主様 ようこそ

前衛性、斬新さ、などというのを越えて、狂気、理解不能に近い音楽であるということがわかりました。終演後、指揮者の鈴木秀美さんに、「当時の人は果たしてこの音楽を理解、受け止めることが出来たのでしょうか?」と聞いたところ、「どんな時代でも理解できる人はいたのだ!」というお答え。まさにそういう音楽だったということがわかるような演奏でした。オーケストラ・リベラ・クラシカを是非聴いてみてください。

投稿: AH | 2007/07/27 21:25

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