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2007/01/12

鈴木秀美モダンオケを振る&ピリオド奏法(特)

(一度書きかけて全部消えてしまい、気力がないので短縮しました。でもこの長さ)

鈴木秀美さんが始めてモダンオケを振りました。昔アマチュアモダンオケを振ったことはありますが、それは、この際私の心の中に思い出としてとどまっていればよいということにしましょう。

前半のコジ、レチがたくさん入っていて、これが結構楽しめました。鈴木優人さんもなかなかのもの。モダンオケで面白く聞かせるのはなかなかないのですが、レチに生きる(と私が勝手に思っている)だけあってさすがという感じ。何より驚いたのは、ダリオ・ポニッスィさんのレチのうまさ。もちろん、イタリア語はネイティブだから得意なのは当然としても、声量は俳優だけあって歌手より通る。音程もリズム(?)もすばらしい。どう見ても本職。そして、もっと驚いたのは、終曲のコーラスで他の歌手に混じって歌ったこと。さすがに声の質という意味では本職にかなわないものの、それ以外は本職顔負け。アリアは難しいかもしれませんが、あまり出番のない脇役くらいなら十分いけるのではと思いました。オケは、最初少々もたついたものの、徐々に落ち着きました。普段モダンではやらないような思い切った表現・ボウイングを随所に見せていました。それなりにカッコついていたかな。ちょっと物足りなかったのは、ノンヴィブラートにした時に倍音成分が少ないせいか、ちょっとくすんだ音色になってしまったこと。明るい曲が少々憂いを帯びたような響きに感じられてしまうことがあったこと。音が痩せて力がないように聞こえることがあったこと。やっぱり、楽器はモダンでもいいので、ガット弦でやってほしかったなという感じです。

後半はジュピター。普段OLCでも聞いたことのないような実に快速テンポ。そして、一方で一つ一つの音のニュアンスをかなり細かく指示して変化させていたような気がします。ひとつの音の中でもかなり微妙に変えていますね。さすがに弦楽器奏者。細かいところまでこだわってすべての音をきめ細かく磨き上げていくのは秀美さんの特徴ではないかなと感じました(実際にそうなのかどうかはわかりませんが、私にはそのように感じられるというだけです)。OLCではVnの両巨頭がいるのでさほど目立たなかったのですが、意外なところで「発見」をしました。

それと、管楽器のアーティキュレーションとそれを前提とした語るような歌いまわし、というのも成果だと思いました。

さて、弦楽器ですが、自分でも最近やった曲だけにかなりシビアに聞いてしまいます(自分が弾けたかどうかはさておき)。

皆さん、コンクールの上位入賞者であったり、海外で活躍したりと若手の有望株ばかり集めてはいるのですが、にもかかわらず、ずいぶん奏者によって違いがあるなという感じ。コンマス、2nd トップを別格としてそのほかを分類すると次のような感じに。

1.まさにわが庭という感じで、生き生きとごく自然に音楽を演奏していた:白井圭さん

(さすがOLC経験者で古楽に慣れているだけのことはある。周りとのボウイングテクニックの巧みさの差は歴然)

2.そこまでは行かないまでも、今までやりたくてやりたくて機会が来るのをうずうず待っていて、ようやくその機会が、ということでものすごく張り切ってものすごく楽しそうに演奏していた(はじけていた):ヴィオラのトップの方(鈴木さん?)など

3.少々ピリオド奏法の経験はあって、違和感はないが、普段やりなれていないので、自分のものにはなりきっていない。しかしそこそこうまく、演奏にキレと力はあるように思える:これが意外と多い

4.ピリオド奏法は初経験だが、演奏キャリア、人生キャリアの豊富さで音楽にはついてこれた。ただし、なんとなく勝手が違うのでおとなしい印象:これもそこそこいる

5.何がなんだかよくわからないという感じでの戸惑い、ためらいからか、萎縮してしまったのか、見た感じボウイングに勢い、切れ、元気がどうも感じられなかった。こんなはずじゃない、どうしたんだろう?:ホンのわずかだがいた

これを見て、やはり、ピリオド奏法かどうかはともかく、Mozartの音楽が求めている表現をするには、ボウイングの発想、技術を変えなければだめだということがはっきりわかります。勢い、切れのあるボウイングって大事だな。

白井さんは、ピリオド楽器で鍛えたボウイングテクニックを駆使。ピリオド楽器をやるとモダンもますますうまくなることがあるんだなと感じた次第。そんな別格の彼はともかく、分類2の人は、見ていてもでてくる音もとても楽しかった。ジュピターで、ヴィオラがここまで存在感を示した例はあまり聞かないのですが、ブラヴォーを送りたいですね。分類3の人、今回出演している若い世代の人で、特に桐朋系の人は、1999年前後に今井信子さんが学生向けにピリオド奏法らしきものを教え(高田あずみ師匠も少々絡んでいたような記憶が)、オケも結成していた関係からか、ピリオド奏法をかじったこともあれば、実際にそれらしき演奏をモダンオケでしたことがあるという人たちです。私も1999年5月ころに桐朋ピリオド奏法オケにバロックボウを貸したことがあります。Googleで演奏者の名前を検索したら、自分のPCのそのころのメールの中からなんと今回の出演者の名前が出てきました。今回の出演者のうちの一人が私の弓を使い、また、別の一人がオペラシティのBCJの演奏会を聞きに行っているのです!すでに、そういう世代の人たちなのです。芸大の人でも、このころから古楽科ができたりして、色々と見聞きする機会が増えた世代でもあります。白井さん以外あまりみかけないメンバーで、果たしていきなりピリオド奏法がうまくいくのか、と思いましたが、予想以上の健闘の影には、こうした歴史的な経緯も見え隠れしているようです。分類2,3の人たちが、ピリオド楽器にまで進出するかどうかは何ともいえませんが、モダンオケでのピリオド奏法という点では、リードする立場になっていくのかもしれません。

分類4,5の人は、ピリオド奏法に否定的な印象を持たなければいいな、演奏が窮屈にならなければいいなと思う次第です。もう少し時間をたっぷりとってじっくり取り組めば、意識次第では変わってくるかもしれませんが、これからソリストとして売り出す金の卵みたいな人が、ピリオド奏法に染まるといったことを音楽業界、レコード業界が許すのかなという気もします。あずみ師匠くらいになれば、何をやっても気持ちをすぐに切り替えられるでしょうし、それぞれに生かすこともできるでしょうけど、果たしてどうなのでしょう?

今後、分類2,3の人たちを中心に、モダンオケを結成して秀美さんが継続的に指揮したら結構いいものができるのではないかという潜在的な可能性を秘めた演奏だったと思います。和製ヨーロッパ室内管弦楽団(?)のような。どう考えても、「これでもう終わり?これからも是非!」という感じのメンバーが少なからずいたような気がしました。秀美さんにもOLCをおろそかにしない範囲内でそういう人たちに是非応えていただければなと思いました。「古楽は一日にして成らず」

とにかくやってよかった、次につながるコンサートだったと思います。

一方、OLCって結構いいオケなんだな、と改めて思いました。今年はMozartが終わってまたハイドンに戻るのかもしれませんが、いずれジュピターに取り組んでほしいな、という思いを改めて強く持ちました。

なお、この日の演奏を「ピリオド奏法」と呼ぶべきかどうかは非常に迷うところです。「ピリオド奏法」をしているのではなく、Mozartが求めるように演奏しているわけで、楽器がモダンだからといってピリオド楽器の場合と変わるわけではない、という考え方があるからです。ただ、使わないと大変なので使いましたが。

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