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2006/12/03

ウルトラマンと古楽の出会いと別れ

ウルトラマンでおなじみの映画監督実相寺昭雄氏が11月29日になくなられたが、北とぴあ国際音楽祭におけるハイドン「月の世界」の演出家として彼の名前があったことは、訃報の中で全く報道されていない。そして、告別式が行われた12月2日、北とぴあでこの公演が無事幕を閉じた。カーテンコールの際には、「共同」演出の三浦安浩氏が故実相寺昭雄氏の遺影を持ってステージに現れた。

氏は、近年、オペラの演出にも進出していたようであるが、古楽器を使ったオペラというのは恐らく初めてであろう。寺神戸亮指揮レ・ボレアード、そして今をときめく人気歌手の森麻季や音楽祭ではすっかりおなじみの野々下由香里らが登場となれば、いやがおうにも期待は高まる。それだけに、氏が実際の舞台を見届けることなく世を去ったことは残念でならない。どうして、氏が古楽器オーケストラと一緒にやることになったのか、その経緯はわからない。

さて、実際の演出は、特撮というイメージとは全く違って、いたってシンプルなもの。道具は決して多くないし、特殊な効果を求めるような演出もしていない。あくまで、基本的な3パターンのセットと、照明と、そして人の演技で表現していた。もちろん、ピカイチの音楽の存在は忘れてはならないし、それを殺すような演出というわけにもいかないであろう。そんな中でも、イラスト画を使った演出は目新しく、また漫画世代には大変親しみを覚えるものであり、ほとんどの聴衆が心から楽しめたのではないか。テレビドラマの中でも時々原作のイラスト(数コマ)が挿入されることがあるが、それと似たような感覚だ。ウルトラマンとは大分趣が異なるものの、シンプルながらも実験的な試みがちりばめられていた。レザールフロリサンのラモーの演出(ヌードダンサ)に比べれば超控えめであったものの、穴澤ゆう子の生着替え的な演出があった。このなかにどこまで入院中だった故人のアイデアがちりばめられていたのかは知る由もない。

寺神戸亮も私もいわゆるウルトラマンで育った世代である。海外生まれの寺神戸氏がウルトラマンを見ていたかどうかはわからないが、我々の年代にとってはウルトラマンの撮影というのは、時代の最先端をいくすごいものだという印象が強い。もう40年も前の昔のことである。

演奏に関しては、どうしても森、野々下のチャーミング姉妹競演に目も耳も行ってしまうし、確かに野々下も例年以上に気合が入っていたように思えた。森のテクニックは素晴らしく、外人のオペラ歌手のような雰囲気であるが、声のチャーミングさでは野々下か。しかし、実際の主役はボケ役、道化的役柄のバス歌手フルヴィオ・ベッティーニであろう。拍手もソプラノの二人をすら上回るものであった。歌もさることながら、その演技力に魅了され、笑った。カウンターテナーの弥勒は、思った以上の出来。自らオペラの演出など手がけるが、そういう経験も生きているのか。オケは、ここ数年でも安定感など出色の出来ではないか。特に、通奏低音がレシタティヴォでいい味を出していた。単なる和音の弾き方だけで、これだけの表情を付けられるというのは素晴らしい。ついつい退屈で省略したくなってしまうレシタティーヴォがとても楽しめるものになっていた。

そんなことで、実相寺氏の弔い公演として最高のものになったのではないか。氏が存命であれば、これからも古楽器との画期的なコラボレーションが期待できたのではないかと思うととても残念である。心からご冥福をお祈りしたい。

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コメント

その後、私の友人より、以下の記事を紹介されました。

LINDEN日記
http://blog.livedoor.jp/naoh123/

実際には演出には全く関わっていないということが書いてあります。入院中でしたし、現場を指揮したことはないでしょう。制作現場にいなければ、実質的には演出したとはいえないのかもしれません。

なお、当日、「ご来場の皆様へ」ということで主催者から以下の様な内容の紙が配られました。

(以下転載)
故人はかねてより、「とにかくおもしろいオペラなので、皆さんに楽しんでご覧いただけるようなものにしたい」と語っておりました。
演出家の三浦安浩をはじめ、スタッフ一同、故人の意向をしっかりと受け継いだオペラ《月の世界》を制作しました。
どうぞ最後までごゆっくりお楽しみください。
(転載終わり)

これだけでは、どの程度演出に関わったのか知ることはできません。「意向」というのが具体的な演出の中身に及ぶのか、「楽しめるように」ということなのか。。

いずれにせよ、元気であれば古楽器によるオペラの演出をしようとしていたということは事実であろう。かえすがえすも残念でなりません。

投稿: AH | 2006/12/03 09:35

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