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2005/12/31

2005年最大の謎、BCJロ短調ミサ

いよいよ大晦日。明日からはMozart Yearということで、今年の謎は今年のうちに(掃除用具のCMではありませんが)。

AHにとって今年最大の謎は、BCJロ短調ミサのKyrieのテーマのアーティキュレーションの歌い方。BCJは次のように歌っていました。bwv2322 Kyrie eleisonのleの母音のところです。これはテナーのパートですが、拡大してみていただくと(画像をクリックしてください)、3拍目の裏から4拍目の音の上のところにスラーらしきものがある。BCJはこれを忠実に再現しているようです。

bwv2321一方、最初にフルートがテーマを演奏する時にも同じように演奏しています。楽譜はこうなっています。 ここでは明らかにスラーが書いてあり、そのとおりに演奏されています。

市販されている権威あるスコア(ベーレンライターのスメント版、ペータースのヴォルフ版)を見ると、フルートのスラーは採用されていますが、合唱のスラーは採用されていません。いうまでもなく、ここでご紹介している画像は、自筆譜ファクシミリです。では、なぜこれらの権威ある版は、合唱パートに書かれたスラーを採用せず、BCJは採用したのでしょうか?念のため、他のパートを見てみると、第2ソプラノを除いていずれのパートにもこのスラーはあります。

bwv2323ところが、アルトにはこれと微妙に異なるスラーがついています。 これは器楽と全く同じパターンです。8分音符の2つ目の固まりの真中にもスラーが着いています。これは他のパートにはありません。

さらに読み進めると、合唱パートでもしばしばスラーが書かれていない個所があります。器楽とユニゾンになる最後のバスのテーマは書かれていません。

では、バッハの意図はどこにあったのでしょうか?Haydnならいざ知らず、Bachが敢えて毎回違う奏法を要求していたとも思えませんし、そうする必然性も音楽的にはないような気がします。一方で、合唱パートに書かれたスラーは本当にBach自身によるものなのか、ということも一応疑っておかなければなりません。

器楽と合唱が同じアーティキュレーションで演奏すべきか、それぞれの事情で変えてよいのか、というのは大変悩ましいところですが、少なくともこの音型に関しては、このアーティキュレーションスラーによって何か特別な意味が与えられているような気もするので、少々ぎこちなく、固く(別の言い方でいえば「流れない」)聞こえてしまうところはありますが、敢えて、BCJの様に合唱も器楽と全く同じアーティキュレーションで演奏することには、それなりの合理性があるのではないかと思われます。Bach自身は、しばしば器楽と合唱のアーティキュレーションを分けていますが、この部分のように同じ母音をずっと伸ばしているところのスラーというのはあまりないような気がします。だからこそ、自筆譜に書いてあるスラーの意味を問いただしたい。

結局、謎は謎のまま。ぜひ、鈴木雅明さんご自身の解説を聞いてみたいものです。

今年の通常版ひとりごとはこれで終わり。今晩、年忘れひとりごとを文字通り夜中に一人でブツブツ言いたいと思います。

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